Ab-05. はり










Ab-05
はり

ハンノキ
カバノキ科 榛・榿

波牟乃木・波里・榿・榛

漢名;赤楊セキヨウ

ヤシャブシ
夜叉倍子

ツノハシバミ
角榛 

【万葉集記事】 

01-0019

01-0057

03-0281

03-0289

07-1156

07-1166

07-1260

07-1354

07-1156

10-1965

14-3410

14-3435

16-3792

16-3801

19-4207

14

()
01-0019
近江大津宮に天の下知らしめしし天皇の代
反歌

綜麻形乃
林始乃 狭野榛能 表尓着成 目尓都久和我勢

綜麻形へそがた
林のさきの 狭野榛さのはりの 衣きぬに着くなす
目につくわが背

注釈

綜麻形=知名
滋賀県栗太郡東町臍 ヘソガタでなくミソヤマと呼び方がある。

さのはり=さ
は接頭語で野榛のこと、一説に野萩。 

つくなす=着くように

()
03-0281
高市連黒人の歌ニ首

去来児等
倭部早 白菅乃 真野乃榛 手折而将帰

いざ子ども
大和へ早く 白菅の 真野の針原 手折りて行かむ

注釈

真野=神戸市長田区東尻池町。

()
07-1156
雑歌
摂津にして作る

住吉之
遠里小野之 真榛以 須礼流衣乃 盛□過去

住吉の
遠里とおさと小野の 真榛まはり
摺れる衣の 盛り過ぎゆく

注釈

遠里小野=大和川を挟んで、大阪住吉区と堺市とに遠里小野町がある。

()
14-3435
比喩歌

伊香保呂乃
蘇比乃波里波良 和我吉奴尓 都伎与良之母与 比多敝登於毛敝婆

山伊香保いかほろの岨そひの榛原
わが衣きぬに 着きよらしもよ 一重ひとえと思えば

注釈

つきよらし=染め着きがよろしい。

一重=着物の一重と純粋とをお懸ける。

()
19-4207
二十二日、判官久米朝臣広縄に贈る霍公鳥の怨恨の歌

此間尓之氏・・・安気佐礼婆
榛之狭枝尓 暮左礼婆 藤之繁美尓…

この間にして・・・垣内かきつの谷に
明け去れば 榛のさ枝に 夕されば 藤の繁みに

注釈

背向=ななめ後ろ

垣内の=自分之領土

概説】

万葉集で「榛また波里」とは、今いうハンノキのことと解ける。他に、萩ハギを採る説、夜叉節ヤシャブシ又五倍子ゴブシとする説、を唱える人がある。漢字の“榛(榿)”(a)ハシバミ、(b)ハンノキを指すのであって、両者ともにカバノキ科Betulaceaeに属するから、広く樺カンバの類全般に迄に拡げていう事もある。榿キ・ガイの字もハンノキであり、榛と榿とは同じ樹種であるけれども、別種であるとの文献もある。

集の紀文にある榛ハリについてこの字は、日本最古の書”古事記”にも載っていて、(枝云々)の記事があるから木本であることを示している。これを草本の萩とする説は、万葉集0057に“二年引馬野に
匂う榛原いり乱れ衣のはせ”の歌から草原に咲く草花であるという解釈が誘因になっている。が、この歌は“二年壬寅太政天皇の参河国に行幸しし時”との件が続日本書紀にあり、大宝ニ年十月甲辰持統天皇が参河国に行幸と合致するので、そうすると旧暦の十月はハギの開花期に遅すぎるとの反論である。榛で染める蓁摺と昔から伝わっている衣染め法があるが、
1156の歌で衣を染めることの記事はヤシャブシの方が染め付きのよいことを理由に、ヤシャブシ論が提案されている。然る上に、夜叉五倍子は榛と同属植物で容姿も似ており、広義の榛に含める意見がある。

雪解けの高原を散策していると、黒褐色の羊の糞のような玉がぶら下がった樹を見かけることがあるが、これがハンである。ハンの仲間には高原のシンボルであるシラカバもそうであり、分類学からいうと、カバノキ科Betulaceaeはヤナギ科Salicaceaeに近い。ともに雄花は紐のように垂れ下がって尾状花序をつける。北半球の温帯~亜寒帯を主生育域とし、北欧ではサウナ風呂でこの小枝を持って入り皮膚をピシャピシャと叩き垢すりをする、即ち、Betとは”打つ”と言うことで、音楽では拍子をとるの意味に変わる。

自然の変遷をみるに、偶々、崖などが崩れて谷間の川が堰き止まると、山あいに湖沼が出来、やがて土砂が流入して高原の湿原に変わっていく。この段階で、まず生えてくる樹がハンノキである。この樹林はあまり永く続かないが、その林を榛原[近江国・大和国に榛原という地名がある]という。この木は20mの高さまで大きくなるが、生長が早く木は腐り易いので倒伏が多く、早晩他の樹木と交代する。

そして、この木は見栄えがしないし、用途があまりない。榛穢とは悪い習慣や乱れた政治を貶して言う言葉である。

ここで、明治初頭に、{榛は萩である}との論争のあったことを注記しておくと、これは足利弘潤の書<真榛問答(天明9年)>に始まったのであるが、岡本保彦は<芽子攷かじこう>(明治4)を著し、”榛は萩の誤”なる論説を吐いたに対し、木村正辞は<榿・萩芽訓義攷>{明治4年}を刊行して対抗し、“ハギに榛を用いるは仮借なり、萩は皇国故人の大字にて芽や榿の字を用いることの説誤りなり”と木村博士・川田博士まで両立しての主張に発展したのである。

萩説の根拠は

a)榛の訓は、類聚名義抄にハシバミ・トネリコ・オドロとありハンシバはない。

b)ハギの花は美しく匂う表現に適する。

c)催馬楽に「はぎの花ずりや」の句があって、芽子で花摺する古い実例がある。ハンの木を染料にするには木を削ったりの予備操作を必要とし、直ちに染料材料とならない。

d)入り乱すといふ表現は萩の花のような草系のものをいうのである。と。

<古事記伝
42
>


此は波理能紀
ハリノキと訓ずべし、俗に波牟能木ハムノキと云物なり、万葉の歌に榛とあるも是なり、契沖云、顕昭萩と榛とを一に云れど、万葉に草の萩をば、芽とも芽子とも書けり、木のはぎに榛字を書り、榛はハリなり、はぎと云は、はり木と云べき、りもじを掠せるなり、俗にはんの木と云、日本紀に蓁摺衣などあり、万葉に衣を染とよめること多し、今も否かなどには榛を植え置て、染具とするなり、萩も花ずりと云が如し、中略

ハンノキは種類が多く、このハンノキ属Alnusにヤシャブシと呼ばれる一連がある。この樹に巣くう虫によって出来た虫癭(五倍子という。よく似たものにヌルデが作る没食子がある)からタンニンを採る。夜叉とは角の生えた恐ろしい鬼のことで、おそらくハシバミ属CorylusのツノハシバミC.Sieboldians
Blume
の堅果をみていったのではないか。ハシバミCorylus
heterophylla
Fisch.
の実は栗のような美味であり、外国でもFilbert,or
Hazelnu
と言う名のナッツはこの実である。{}
について古文ではハシバミをいうことがある。

カバノキ科Betulaceaeにカバノキ属Betula(シラカバ・ダケカンバ・オノオレカンバ・ミズメ・ネコシデ)ハンノキ属Alnus(ハンノキ・ヤハズハンノキ・ヤシャブシ)、クマシデ属Carpinus(サワシデ、イヌシデ、イワシデ)、アサダ属Ostrya(アサダ)、ハシバミ属Corylus(ハシバミ・ツノハシバミ)、などを包含し、それらはよく似ている。樹木は生長が早くすぐ高木になるが、寿命が短く巨木にならない。また倒木は腐りやすく、ナメコやキクラゲのホダ木になる。切り株から孫生ひこばえがよくでるからハンと名づけられたと。<大言海>では芽の生ずることを[張り]というそうである。またこの木は折り畳んだような皺のある葉が小判のようであるので判はんの呼びが短絡したと。榛は古典文に見られ古事記にも記載されており,日本人に親しまれた樹である。この樹皮を搗いて搾った汁で帯緑褐色に染めた衣服を榛染の衣と言い、当時の高官の着衣とした。榛樹は水分ある土地を好むから、田の畦に植え、刈った稲を乾かすハサとし、昔の田園風景であった。

<山海録>

下受榛楉、以栗而似味美

<本草綱目(1590)李時珍>

榛樹低く、小にして荊の如し、叢生す。冬の末花開く、檪に花の如し、条をなし下に垂る。長さ二三寸、二月葉を生ず、初生は櫻桃ユスラの葉の如し、皺文シワ多くありて、細かき歯、及び尖りあり。その実苞をなす。三五相粘。一つの苞に一つ実々として椚の実の如し。下壮に、上鋭し。生は青く、熟すれば褐色、其の殻厚くして堅く、その仁白して円く、大さ杏仁の如し。また皮に尖あり、然れども空なるもの多し。故に諺に十榛九空ジッシンククウ。 その葉は悉く皺む。因りてハシバミ也。実を以って秋季とす。

<大和本草
12
雑木
>

榿ハンノキ 宋宋祁益部方物略記曰、民家播レ之、不二三年一材可レ倍レ常、薪レ之疾種函取、里人以為レ利、杜子美見レ榿木三年大、東坡榿木三年行可レ檯。榿葉は榛に似たり。山州江州に多し、田の畦にうえて薪とし、長じやすし喬木となる。枝を切れば田の妨げとならず、実を植ふべし。又早くその幹を切れば一根より多く叢生し荊の如くなるあり、多く植えて薪とすべし。一株立て高大なる木と幹を切りて叢生して小なるとは別樹の如くなれども一物なり、…その木よく榛に似たり。故日本紀神武記に榛原と書きてハリハラと訓ず、東鑑に榛谷ハリカエと読む、その実は榛にあらず。食うべからず。

<大和本草
弁正
>

ハリノキ規範の又ハンノキとも称して呼ぶ。雌と雄とあり、オハリノキは葉櫻に似たり、ッエハリノキは葉ハシバミ故に似たり、粘りあり、この木脂深し、花実は何れも同じく、花蓽また石菖の穂の如く下垂す、春にいたり黄粉を莫く、是花也、実は別所になる、松毬に似て小なり、染家此をもちふ、ヤシャブシとも云。薪の内にて赤色なるはこのハンノキなり、煎汁物を染む。引戸の車或算盤の珠など染むるは此れを用ふ。

<古今要覧稿>

はりのき、今処々に多く裁えて薪とす。此木成長の早きによりて田畑路傍ともにあり、直立して繁茂す、また一種ヤシャブシも榛の同類にして葉円大にして実もまた大なり、此の実染家に用ふ。花は共に秋より生じて開くは厳寒より立春なり。榛の木を榿となし、詩を引て証とし其の形状模様ともに詳なる事は大和本草を始とす、又嵐山は古今注の赤楊なりといへり、其文に、霜神葉赤とあるに少し的当し難し、尤も風土によりての違ひあるべし、中略 予秋に至れば種々の霜葉を集め見れど未だ榛の木の紅葉を見ず、[はりえの浜つとに水の秋や深くあるらん陰しづむ岸のはりはら紅葉しにけり]と浜臣のよしみもあれはいやましに榛の霜葉を尋ねれど今にみず。ある人榎戸の鷲大明神へ行道にて榛の木の麗しく染しを見しといへり、されば十一月のこととにて何れの紅葉も散りし後なり、是は元木を切りて新枝の生ぜしものなるべし、ヤシャブシは近辺にては鴻台辺より多く植るもの也、是は田のはたには植ざるものにて多く山野にあり、中略 又日光にてフシと云うものは葉細き桃葉に似て細鋸葉あり、此の実にて婦人歯を染といふ。又メハリの木と云はしゃぶしに似て小にして先くぼめり、是はやしゃぶしより葉厚くしてこはし、此の二種共にやしゃぶし、はりの木の実も用いて佳なり、やしゃぶしは元来本邦に生ぜしものなり。

上記に掲示した文献には正確でない記述もある。雄雌異花であるが別株ではないし、厳寒に花が咲くというのもおかしい。漢語でハンノキのことを赤楊とするのは日本での話で、中国では榿・榛・播の字を遣っている。中国では樺をハシバミとするが正統との意見がある。また、榛栗棗脩という熟語は、夫々ハシバミ・クリ・ナツメ・ホクジを示すのであり、この四者は音通から榛=虔、栗=慄,棗=早、脩=修、共に婦徳を表わす。

榿林凝日吟風葉
籠竹和煙滴露梢


杜甫 詩

飽聞榿木三年大
与至渓辺十畝陰


杜甫 詩

濯錦江辺木有榿
野園封植佇華滋

北宋
王安石 詩

瞻彼旱麓
樺楛済済

詩経(大雅・旱麓)

作子楚室
樹之樺栗 椅桐梓漆 爰伐琴瑟

詩経
(鄭風
定止方中
)

数家砧杵秋山下
一部荊樺寒雨中

中唐
韋応物

集に詠まれたはり[摺る]に関係したものが多いゆえに、ハンノキの外にヤシャブシのことも配慮されるべきである。また食用になるハシバミも重用されたであろう。

【植物】

ハンノキ Alnus
japonica
Steud.
カバノキ科
Betulceae
(Betula
japonica
Thunb.)

ハリ・アカハリ・ヲハリノキ・オオバハリノキ・ハリギ・ハノギ・ハナノキ・バンギ・バンダ・ケネ

バンゾウ・ソロバンノキ・コバン・ヤチバ・ヤチハンオキ・ハシバミ・ユッパ・ヤッパ・ツクナベ

赤楊・榿・榛・播・棵・水棟・五里木・楡里木・茶条・水凍果

北海道・本州・四国・九州・中華国北東部に分布、湿った土質を好み、高さ29mに達する落葉高木。雌雄同株。樹皮は淡紫褐色、若枝は灰褐色で、不規則に浅く裂けて剥がれる。葉は互生に着き、長さ513cmの長楕円形で基部は広い緩やかな楔形、縁には鋸歯、裏面の主脈の基部に赤褐色の毛がある。葉柄は1.53.5cm.
花は2~3月に葉の開く前に開花する。尻尾状の雄花序は枝先2~5個着き、始め直立するが、開花時には黒褐色で、長さ4~7cmの長さになって垂れ下がる。雄花は苞鱗の内側に23個着き、花被片と雄蕊は4個、雌花序は雄花序の下部の葉脈に1~5個着く。雌花は紅紫色で花被はない。果実は始め緑色であるが、10月成熟すると長さ1.52cmの木質の果穂となって翌年の春まで樹上に残り、枯れた茶色の松ポックリの様で、大きさはヤギの糞ほどである。種子は長さ34mmの広楕円形で両側にごく狭い翼を着ける。1l
240gr.155000
粒。水田のあぜ道にハサギとして植えられた。公園樹・街路樹に時々植えられる。器具・家具材に用いられ、また薪燃料に向けられる。この木の浸出汁で衣類を染めたものが榛染めとして往時は重要であった。

補注、

1.冬芽は、前年葉の落葉跡のすぐ上に枝の側に沿うようにつくが、この芽には短い柄がついている。

2.前年の秋に、枝の先端に雄花の花穂、下部に雌花が形成し、2月下旬ないし3月始め出葉に先立ち開花する。風媒花。此の冬芽の基部は成長して柄になる。このような形の冬芽はブナ・サワグルミ・ムラサキシキブなどにみられる。

.葉の裏面で、葉脈の分岐点に綿毛がついている。

.葉は乾燥すると、赤褐色になる。

5.果実は10月頃熟し、苞が成長した鱗片に包まれる.鱗片の内側に黒褐色の小さな種子が入っている。

.褐色の果実は、普通は2個対になって付く。暗緑色であるが、越冬し褐色になり、翌年の春頃まで枝にぶら下がっている。物類称呼にこれをヤマダンゴ(尾張方言)と書いてある。

7.古典にいう榛は,オオハシバミバミCorylus
beterophylla

Fisher
 であるとの意見もある。

近縁種

エゾハンノキ

A.j.var,arguta
Cell.

北海道・本州・朝鮮・ウスリー

マルハハンノキ

var.latifolia
Call.

北海道

ケハンノキ

var,korena
Call,

本州・朝鮮

アカハンノキ

var.rufinervis
Honda

本州

サクラバハンノキ

Atrabeculoss
Hand-Mazz,

本州(近畿以西)・中国

ケヤマハンノキ

Ahirrsuta
Turcz.

北海道・本州・四国・九州・樺太・千島・朝鮮

ヤマハンノキ

var,
sibirica Turcz.

コバノヤマハンノキ

var.microphylla

東北・福島・日光・尾瀬・上高地

エゾヤマハンノキ

var.velutina
Hara

本州・満州/朝鮮

ヤハズハンノキ

ANatsumurae
Cell.

本州の赤高山地帯

カワラハンノキ

ASerrulatoides
Call

本州・四国の河沿

カラフトミヤマハンノキ

var.sachalinensis
Nemoto

ミヤマカワラハンノキ

AFauriei
Lev.

本州。日本海側の山間地

ウスゲヒロハハンノキ

AMaryri
Call,

北海道アポイ山脈

ヒロハハンノキ

var.glabrescens
Nakai

北海道・本州北部・朝鮮

ウスゲハンノキ

var,intermedia
Hara

北海道

ケカワラハンノキ

AKatoana
Yamagita

三河豊川沿岸

ミヤマハンノキ

AMaximowiczii
Call.

北海道・本州北中部・樺太・千島・朝鮮

オオバハンノキ

ASteboldians
Matum.

本州(山形県以南、和歌山県)

タイワンハンノキ

Aformosana
Makino

台湾中部山岳

マンシュウハンノキ

Amandschurica
Hand mazz.

ミネハンノキ

イワキハンノキ

Alnus×Hosomii
の雑種

ヤシャブシ Alnus
firma
Sieb.et
Zucc.
var.Thunbergii
Blume
夜叉五倍子
AYasha
Matsum.,
A.Firma
var. Vasna
Winkl.

ヤシャ・ヤシャムシャ・ヤシャンボ・ヤシャボッチ・キブシ・フシノキ・ニッコウブシ・

イハバ・ネハリシバ・アズマ・ハイノキ・ヤナシデ・ハルノキ・オハグロノキ・ツケナベ

本州(太平洋側)・四国・九州の山地に生え、高さ20mになる落葉高木。葉は互生し長さ4~10cm狭卵形、側脈は1317で明瞭。花蕾は秋に出来て、3月頃開花、前年枝の先やすぐ下の葉脇に着き無柄で垂れ下がる。雌花序は雄花序より下に着く。果穂は長さ1.52cmで直立する。砂防樹・緑化樹に植樹され、果穂にはタンニンが多く染料に用いる、

補注、

1.雄雌異花で、雄花群は23群の穂となり、1個の苞鱗内に3個の花を持つ。

2.雄・雌ともに花被は無い。花穂は秋から粘液を分泌する。

3.根には菌根が共生し放射菌類アクチノミセテスによって肥料分が供給されるから、荒地でも育つ。

近縁種

オオバヤシャブシ

Alnus
Sieboldiana Matsusm.

ミヤマヤシャブシ

A.f.var.hirtella
franch.

ヒメヤシャブシ

A.
pendula Matsum

ツノハシバミ Corylus
sieboldiana

Blume
ナガハシバミ 角榛

北海道・本州・四国・九州・朝鮮に分布、山地に生え高さ4~5mになる落葉低木。若枝には腺毛がある。葉は長さ5~12cm,310cmの広卵形、基部は円形、横皺となり先端部が軍配状に切れ込む場合もある。若葉によく紫色の斑点がみられる。花は34月。雄花序は長さ3~7cmの紐状で前年枝から垂れ下がる。雌花序は数個の単花が頭状に集り、枝先や雄花序の上部に付く。開花時は赤色の花柱が芽鱗から覗く。堅果は長さ6~8mmで、先が嘴状の筒になり、刺し毛の密生した2枚の総苞に包まれる。実は食べられる。

補注、

1.根は地表を走って横に延び、芽を出すので、群落を作る。

2.花は葉に先立って開く。雄花は前年の夏に出来て、垂れ下がって冬を越す。

近縁種

オオハシバミ

Corylus
heterophylla Fisch.

オヒョウバシバミ「榛」

ハシバミ

var.Thunbergii
Blume

夜叉五倍子

トックリハシバミ

var.brevirostris
C.K.Schneid.

オオツノハシバミ

var.mandshurica
C.K.Schn.

【古典】

<古事記
下 雄略
>

又一時天皇登幸葛城之山上、爾大猪出、則天皇以鳴鏑其猪之時、其猪怒而宇多岐依来、故天皇畏其宇多岐坐榛上、爾歌曰、夜須美斯志和賀意富岐美能、阿蘇婆志斯能、夜日美斯志能、宇多岐加斯古美、和賀爾宜、能煩理斯、阿理袁能紀能延陀。

<日本書紀
3
神武>

四年二月甲申、立霊時於鳥山中、其地号曰小野榛原下、用祭皇祖天神

20
天武>

十四年十二月庚寅
高市皇子被
問以実対。賜蓁摺御衣三具・錦袴二具・並紦廿匹

<拾遺和歌集 7-393
>

おもかげに
しばしみゆる 君なれど 恋しきことぞ 時ぞともなきはしばみ

<風土記
尾張逸文
>

張田の邑
昔この辺に榛
(波里)が多い。

<入道右大臣集
>

あやしきも
風にをるてふ さくなぎの はしばみよりも 長く見ゆらむ
藤原頼宗

<増訂豆州志稿
7
土産>

山榛木
赤楊
ハンノキの一種、州俗椰砂木ヤシャノキと言。其の実をヤシャブシと呼て占領と天城山及び他山より産出す。

<和漢三才図会
83
喬木>

波牟乃木
正字不詳

按波牟乃木生山中、高者二三丈葉似栗而軟、花亦似栗花而褐色、実似杉実、其木肌白色、見日則変赤今染家用梅木染汁、中投此屑、経宿以染赤色

<駿国雑志
36
>

夜叉附子
後略

【用途】

ハンノキの木は雑木であり、建築材木に使用されることは少なく、とくに記録すべきものでない。薪炭の木としても劣る。ただし、田舎では田圃の稲のハサ、木は腐りやすく、キクラゲ・ナメコのホダ樹に使用される。

樹皮・葉・果穂にはタンニンを含み何れも染料に用いられる。淡黄褐色の榛染めは、気品の備わった色合いで、古典の貴人の着衣であった。

この樹皮は油分を含むので燃えやすく、束ねて松明とする。また此の材から作った木炭は粉末とし、火薬に配合される。

主なカバノキ科の植物の葉の形

    1.
    ハンノキ

    2.
    ミヤマカワラハンノキ

    3.
    ヨグソミケハリ

    4.
    ジゾウカンバ

    5.
    イヌシデ

    6.
    クマシデ

    7.
    ヒメヤシャブシ

    8.
    オノオレカンバ

    9.
    カワラハンノキ

    10.
    アサダ

    11.
    ケヤマハンノキ

    12.
    ヤハズハンノキ

    13.
    アカシデ

    14.
    イワシデ


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