Ad. 仕切・壁材・敷物に用いる植物










A.
住に関するもの

d.
仕切り・壁材・敷物
etc.
に用いる竹類・草類

該当する植物

No.

集に記載名

同訓

漢語

日本語

Ad-01

たけ

タケ

マタケ・ハチク

Ad-02

しの・すず

メタケ

篠・子竹

ヤタケ・スゾタケ

Ad-03

ささ

コタケ

小竹・佐左葉

コダケ・ササ

Ad-04

かや

カルカヤ

刈草・苅萱

ススキ・カリヤス

Ad-05

すすき(をばな)

ススキ.オバナ

芒・乎花

ススキ・オバナ

Ad-06

をぎ

オギ

乎疑・荻

オギ

Ad-07

つばな(あさぢ)

チガヤ

茅・浅茅

チガヤ

Ad-08

みちしば

ミチシバ

結縷草

カゼクサ・チカラシバ

Ad-09

しば

シバ

シバ

Ad-10

こも

コモ

薦・菰

コモ

Ad-11

あし(よし)

アシ

葦・芦

アシ

Ad-12

かつみ

ハナカツミ

勝見[]

ガマ

Ad-13

おほゐいぐさ

ヰグサ

フトイ

Ad-14

しりくさ

シリクサ

知草・尻草

サンカクイ

Ad-15

すげ

スゲ

菅・莎

スゲ

Ad-16

ななふすげ

ナナフスゲ

七相菅

アブラガヤ

Ad-17

しろすげ

シロスゲ

白菅

シロスゲ

Ad-18

いわすげ

イワモトスゲ

岩本菅

イワスゲ

Ad-19

すげかさ

カサスゲ

菅笠

カサスゲ

人間は身を守るため、太古は洞窟に隠れたり、竪穴を掘って寝所にしていたが、やがて地上に現れて木材を組み合わせ掘立小屋らしきものを建てて居住する。やがて人間が増えて集団を作り始めると、小屋はだんだん多くなり、かつ大きなものになり、高床式にしたり、外壕を掘ったりして外敵に備える。一方大家族のグループとなっても、個人単位の自由を認める段になると、壁の仕切りを施した多間式住居が出来上る。この家族制度が移行する段階の建屋については、例えば五箇山の合掌造りに遺されている。そして、人間が美の意識を持つと、先ずこの仕切りに工芸が施工するようになる。欄間や襖絵など日本の建築物はその粋を集めている。

仕切りを頑丈にすると、日光が差し込まず暗くて不衛生的である。これは欧州の石造り建築に見られるように、光をどのように取り入れるかの工夫が必要であり、多くはローソクの燭光を頼りにしたのであろうが、このため石壁は多年の煤で黒く汚れており、ペストは3度に亘り大流行があった。日本の建屋は木造を主体とし、仕切は土壁と、障子()と、簾であったので、寒さに対する防御はそれほど良くなかったかも知れないが、案外衛星的であり、コレラなど伝染病は外国から齎せたものである。

これら仕切り材料は軽質のものから選ばれるのが必然であり、丁度日本の野山に自生している竹類と菅類が重用されることになる。また居住を快適にするために、土間や板間では敷物を宛がって座るようになり、これには藁類と藺草類が採用された。

それ故、本項で纏めた植物は線形葉をもつイネ科・カヤツリグサ科・イグサ科を主体にすることになり、稀にアヤメ科・ラン科の植物を、南方ではヤシ・バショウなどを用いる時もあるが極めて少数例で、いずれも単子葉植物である。イネ科の植物の桿は中空であり、カヤツリグサ科・イグサ科の髄はスポンジ状に詰っており,ともに軽質で保温性が高い。繊維は案外強靭であって、縄などを挿げ、細胞膜は珪化細胞を作るので腐りにくい特徴がある。双子葉の場合は葉が肉質部が多く、これが栄養分で腐敗や虫害にあい、長く保たない。

人間が建屋を必要とする理由を考えてみると、①猛鳥獣から襲われるを防ぐ、②風雪を防ぎ、寒さを避ける、③家族単位の構成の団結を固める。④個人の自由を主張し、秘事を隠す。⑤安定した財力のあることを示し、とくに権威者にとっては骨董品を顕示する場所になる。など、本来の目的を外れて、人間の隠れた本能を満足することに徹する。しかし、我々がいま鑑賞する事の出来る文化遺産は、これら特権階級のこれらの贅沢な建造物によって保護されて来たことを留意しなければならない。

簾や暖簾で仕切る方法は、最も簡便であり、障子・襖も含めて日本的の工夫である。畳もまた日本人の発明した優秀な敷物であって、住居に入るときは履物を脱ぐとか、ベッドを置かないで布団を毎日敷き直すとか、欧米とは違った生活が基本となっている。

東大寺に見られるように、極大型の木造を建設する技術は有史以前に既にあったし、竹類を骨材にして泥・漆喰で練り固めた壁は戦国時代の城郭に応用され、鉄砲による攻撃から守るに役立った。

イネ科Poaceae植物は熱帯から寒帯まで世界に広く分布し、約7008000種も現存する大きな科である。いろんな所に適応して生育するから、その形態の種々万別である。多くは一年生であるが、多年生のものもあり、木質の茎のあるものをタケ科に分離して考える学説もある。葉は、平行脈で細長く、普通は腺形稀に狭卵形で、茎の円周上の反対位置に交互に2列に並ぶ。葉の基部は葉鞘になり、それが重なって筒となる。筒と葉の接点には葉舌がある。花穂は茎の上端の葉から出て、一般に円錐花序・穂状花序に展開するが、最終部分の花序を小穂という。2列に並んで穂柄に着き、小穂の最下の鱗片2個(苞穎)には花がない。

単花は小型で小花といい、外側の鱗片(護穎)と内側の鱗片(内穎)との間に位置する。内外2個の鱗片(護穎と内穎)に覆われ両性、単性、また退化した中性となる。花被は2(or0~3)個の微細な鱗糟に退化する。雄蕊は3(1
)個、葯は2室で黄色、花糸に丁字状に着く。雌蕊は1室、1胚珠の子房と2(13)個の柱頭からなる。果実は小型の乾果(穎花)で、薄い果皮が蜜着、内乳は粉室、胚は小型でヘソと反対側にある。

カヤツリグサ科Cyperaceae植物は全世界に76属約3700種あり、日本に12属約300種ある。主として草本、茎の断面は3稜形で中実が基本、葉は腺形で多くは3列に並んでつき、基部は筒状に合し葉鞘をつくる。「ホタルイ属、ハリイ属などは葉身は退化して筒状また鱗片状の葉鞘だけになる」。花は両性また単性で、雄雌同株or異株、鱗片と呼ばれる苞葉の腋に1個着く。鱗片は小軸に螺旋状or左右2列に着き、小穂を作る。小穂は茎頂に、単生・総状・散形・散房状・円錐状・頭状に集まり、複合花序を作る。花被は退化して無いか針状・鱗状になったものもある。雄蘂は普通3個で、葯は2室、糸状の花糸に底着する。雌蕊の子房は1室、胚珠は1個、柱頭3個また2個に別れる。胚は胚乳の中に埋まっている。スゲ亜科とカヤツリグサ亜科に大別され、前者は果実は果胞とよばれる前葉に包まれ、後者は果実が裸出している。

イグサ科Juncaceaeは全世界に8300種あり、日本には2属約40種ある。多年草また1年生の草本で、普通茎は分岐しない。葉は腺形or糸状or円筒状で、基部は鞘になる。ときには、葉身が退化して鱗片状になる。花序は円錐・集散・頭状花序を執る。花は両性{稀に単性で雌雄異株}。花は小型で、基部に小苞があるものと無いものとがある。花被片は穎状で内片・外片ともに3個、同質同形で弁萼に分化しない。雄蕊は1個。雌蕊は柱頭が3つに分かれ糸状。子房上位で3心皮からなり、1室で側膜胎座or3室で中軸胎座。胚珠は倒生で各心皮に1個また多数。果実には多数の小型の種子がある。

ガマ科
Typhaceaeは世界に1属15種・日本には3種しかない。多年草で、葉は腺形で基部は合着し、粘液線が走っている。花序は頂生して円柱状をなし、上部は雄花群、下半分は雌花郡である。花序の下の細長い苞は早期に落ちる。雌花には長い花柄があり多数の長い毛があって、種子はこの毛を傘にして風で飛ばされる。雌花の心皮は1個、花柱は開花時に長く伸びる、雄花は23個の雄蕊だけから也、柄には長い毛がある。花粉は単粒の外、4集粒も見られる。果実は堅果、種子は1個で、胚は厚い胚乳と薄い外胚乳に包まれる。


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