Da-02. はは

123

Da-02. はは 波波

ももよぐさ 母々余久佐(百代草)

波波古;母子草;貝母

I. ハハコグサ II. バイモ  

漢語: I. 馬先蒿・鼠麹草 II. 貝母

【万葉集記事】 

20-4323

20-4325

20-4326

() 20-4323

    防人山名の郡の丈部真麻呂はせべのままろ

等伎騰吉乃 波奈波佐家 登母奈尓須礼曾 波波登布波奈乃 佐吉泥受祁牟

時時ときどきの花は咲けども何すれば ははとふ花の 咲き出ずけむ

注釈

防人: 各地から徴兵されて当時は主に九州の辺地に配属された一般兵士。

山名郡: 盤田市から袋井市あたり。

() 20-4325

佐野郡丈部黒当くろさき

知知波波母 波奈尓母我毛夜 久佐麻久良 多妣波由久等母 佐佐己弖由加牟

父母ちちははも 花にもがやも草まくら旅は行くともささごてゆかむ

注釈

20-4323, 20-4325の歌は天平勝宝七年乙未二月、相変わりて筑紫に遣わされる諸国の防人らの歌である。

佐野郡: 掛川市東部あたり、 

ささごて=ささげもって、

この歌には ちち (ちちごぐさ)、はは (ははこぐさ)、かや ()、ささ () が隠れて詠いこまれている。

() 0-4326

    生玉部足国いくたまべのたりくにのなり

父母我 等能々志利弊乃 母々余具左 母々与伊弖麻勢 和我伎多流麻弖

父母ちちははが 殿の後方の百代草ももよぐさ 百代いでませ わが来きたるまで

注釈

母々草=百代草、不詳

【解説】

上掲の歌は天平勝宝七年乙未二月、相変わりて筑紫に遣わされる諸国の防人らの歌である。

20-4326の母々余具左は、和歌に直して、百代草となっており。20-4323, 20-4325 は直に

草を歌い入れてないが、母を題意としたものである。辺鄙な地方から召集された防人さきもりが、望郷の念に駆れて、母を懐かしみ想う歌である。この母について、従来の解説には植物名に関係するものだと注釈していない。しかし、歌をよく含読したとき、防人たちは間違いなく草花を視ていることが判詠されるのである。それでは、何の花をみていたのだろうか。このような事を敢えて取り上げる事は異端であると思えるかも知れないが、本著は植物の研究をするのが目的であるから、これを植物として追求するのも一興である。

防人が勤務していたのは、九州の海岸付近であり、彼等は野宿に等しい粗末な小屋に宿泊していたが、閑時に視もの聞もので、上階官吏の真似でもって放詠したのであろう。その場所には旧2月に花の咲く野草であったことが上掲歌の構成から推して、導推される。

古語でハハと発する植物は、①ハハソ(コナラ等のドングリのなる木を総じていう) ②ハハカ(樺櫻) があるが、これは樹木であり、明かに適応しない。それで、草本では③ハハコグサと、④ハハクリが見出される。

I. ハハコグサ (御形オギョウ)

古昔の農耕文化時代に中華国から渡来した帰化植物である。早春に柔らかい綿毛を纏って、黄色の粒状の蕾をつける。せり、なずな、おぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ春の七草,春の節分に搗く草餅は、今はヨモギを入れたが、昔はオギョウであったらしい。また、本草に比列して チチコグサGnaphalium japonicum Thunb,も実在し、両方併せて父母となる。

II. ハハクリ=バイモ(母栗 漢語貝母)

バイモは中華国で薬用としてこれが日本に渡来したのは不詳であるが、相当遅い時期とみてよい。日本在来種のコバイモは各地に変種があり、この根茎は二つの鱗片が抱きあって、母の乳房に似ていることから貝母と名前がついたらしい。昔古のバイモと記してあるものは今いうコバイモである。バイモの花の咲く頃は早くても4月下旬である。


1. ハハコグサ 

ハハコグサはオギョウとも呼ばれて、昔から春の七草として親しまれた植物である。早春に薹を擡げ、その銀箔色の柔毛に覆われた形から直ぐに覚えることが出来る。方言にか草鞋せこ・すずめぼう・とうご・とんご、漢語に鼠麹草・女麹・馬先嵩とも謂う。ただ、<和訓栞>には「母子草といふものは一名にして二物あり」とあり、馬先嵩は別物らしい。<本草和名>に菴蘆子と、<本草色葉抄 惟宋貝俊1284 に鼠麹草、<本草和名(寛政本)>に白嵩、一名繁皤嵩、一名彭勃、和名之呂与毛岐、一名加波良与毛伎とある。

春の七草の一つとして、一月七日の朝粥に入れる、三月三日の節句に供える餅は、いまはヨモギをいれるが、昔はハハコグサを搗き入れたものである。

<古今要綱覧 尾代弘賢1842>

師光年中行事奥書に、七草菜事 萕ナズナ・繁縷ハコベ・芹セリ・菁カブ・御行オギョウ・須々代スズシロ・仏座

別名のオギョウの語源については前掲の<文徳天皇実録>の記事に、同帝母子の御姿即ち御形を表わした草であるとしている。因みに仏教典で五行というのは、涅槃経で聖行・梵行・天行・嬰行・病行。大乗起信論では布施・持戒・忍辱・精進・止観をいうが、これは寺院で朝粥に入れる野菜をこれの言葉をもじって五行としている、鼠耳草・耳麹草というのはこの草が白毛で覆われている格好を鼠に見立たてたものである。

【植物】

ハハコグサ Gnaphatium afline D.Don, G.multiceps Wall ex DC.

日本全土、朝鮮、中華国、インドネシア、マレーシア、インドまで広く分布する。道端や畑など人家に近くに普通に生える越年草、葉は冬季根生葉でロゼット状に地上を匍うが、陽春と共に茎が抽出し、時に叢生して、高さ1540cmになる。葉は柄がなく茎を捲いて互生に着き,全草は白いビロード状綿毛で蜜に覆われている。頭花は小さく36月に開花し、総柹は玉鐘状で、長さ3mm,片は3列で黄色、雌花は糸状、両性花は筒状、両方共に結実する。雄花は雄蕊のみが着いている。痩果は長さ0.5mm,冠毛は黄白色で長さ2.2mm、 風によって飛散する、

<補説>

全草は白色の綿毛で覆われて、空気を抱えているので、これを水に沈めると銀色にみえる。

<近縁種>

アキノハハコクサ

G,hypolencus DC

チチヒグサ

G,japonicus Thunb

ヒメチチコグサ

G,utiginusu L

<周辺>

ハハコグサの所属するハハコグサ属は温帯~寒帯に分布し、世界でおよそ120種存在する。

キク科

Compositae

キク亜科

sub, Carducidae

オグルマ族

trib, Inuicae

ツルハグマ属 Blumea

コウゾウナ

ガンクビソウ属 Carpesium

ヤブタバコ、 ガンタビソウ

オグルマ属 Inula

ミズギク、カセンソウ、オグルマ

ヤマハハコ属 Anaphalis

ヤマハハコ、ヤハズハハコ

ウスユキソウ属 Leonopodium

ウスユキソウ、ヒメウスユキソウ、

エゾノチチコグサ属 Antennaria

エゾノチチコグサ

ハハコグサ属 Gnaphalium

ハハコグサ、チチコグサ、チチコモドキ

<名前>

ハハコグサ、ハハコ、オギョウ、波々古、這孤ハウコ、母子草、鼠麹草コギョウ、菴蘆子、奄蘆子、奄莔子、御形・御形仏・御形蓬、上臈艾ジョウロウヨモギ、餅艾、殿様艾、餅草、灸草ヤイトグサ、茸草ジョウモ、麹花。

方言 カワチジセコ・スズメボウ・トウゴ・ドンゴ

<語源>

植物体の外観から ホホケ が語源であると、牧野先生が提唱し、これが現在の学会の定説である。深津正先生は<植物和名の語源 1999八房書店> に母子草語考として、詳しく解説をなされている。その中にヨモギ餅に使われたのはハハコグサであるに因って母子餅であり、母子とは「這う子」から着たと述べている。鼠麹草・白蒿の漢字を用う。<和訓栞>に言う繁籓蒿が転じてハハコになったとのこと、

<新植物図鑑.牧野富太郎>

本種を母子草ハハコクサというは正しくない、恐らく茎の白毛も頭毛の冠毛もほうけついた名と」なったのであろう。それを旧仮名使いでハハケルと書いたことから母子の当て字を生じたとおもう。

<大言海 大槻文雄1935>

母子餅を製する草の義ならむ、母子草;母子[這児]に供うる餅の義ならむ。後世此の餅を日々になに供す。古へ、米の粉に、母子草の葉を和し、蒸して製したる也。亦草餅を三日に用ひき。

(後に艾餅のくさもちとなる)此の草を御形オギョウ、母子の形代(人形)の義なりや。

<春の七草 曾槃(1800)>

此の草性淡くして毒なし、山野のちまたに生じ、雪に耐え霜に枯す。つねにふるき苗に,若芽のそひて生るなれば,母子と云う名も理なり。

<和訓栞 谷川士清1777 >

ははこ;文徳実録に母子草とみえたり、鼠麹草なり、今はふことをいふ是也、和名類聚(934)に菴蘆子を訓ずれども別物なるべし。三月三日の雛遊にはふこを祭り、この日鼠麹汁にて糕を作ることも文録実録に見え、竜舌糕といふも、荊楚歳時記に出たれば、此草をもははこ草と呼ベルなるべし、俗に河原はこと呼ぶものは白嵩一名繁籓藩蕎と見足れば、此音をもて はヽこと呼にや

<大和本草>

また仏耳草と云、上巳日、是を用いて糕だんごに和す。近世蓮葉を用ふ。

<本草綱目 時珍 1598>

鼠麹草也 二月苗を生じ、茎葉柔軟く寸許にして、白茸あり、鼠の耳の毛の如し、小黄花開く、穂をなし細かき子を結ぶ。

<重修本草綱目啓蒙 隰草>

鼠麹草 母子草 モチヨモギ、ジョウロウヨモギ、オギョウ、トウコ、トウゴ、モチバナ、モチブツ、ウカジブツ、ゴギョウブツ、ゴギョウヨモギ、トノサマヨモギ、トノサマタバコ、カワイチコ、コウジバナ、ツズミグサ、コバリモチ、モチグサ、此草原野に多くあり、秋月苗を生ず。葉は馬歯歯莧スベリヒユ葉に似て薄く、長くして白毛あり、三四月苗高さ六七寸、或は一尺に至る。葉互生し、梢に簇りて黄花を開く、此の花を取り煙草に代え吸う。亦此花を以って莞花偽り、亦蜜蒙花にも偽る。古は上古に此葉を用いて餐とす、即竜舌糕なり、後其色の濃いからんことを欲して艾葉を以って代る.朝鮮賦に所謂ゆる蓬糕なり、今は皺芥葉オオカラシを加えて其の色を助く。

<東雅>

和名抄にて本草をひきて、菴蘆子をはハハコと註せり、文徳実録に見えし母子草といふものはⅠ名にして、二物なり。母子草は鼠麹草または鼠耳子などともいい、古の時には、三月三日に餅となしものなり、また白蒿をも今は俗にカワラハハコグサと云うなり、ハハコとは義不詳。

<文徳実録>

この間,田野に草あり。俗に母子草と名ずく。二月初めて生ず。茎葉は白く脆可也。三月三日に婦女之を採り蒸し搗きて以って餻コメモチをつくる。

<新撰字鏡 草 >

菴蘆子

<倭名類聚抄 20 >

菴蘆子、本草云、菴蘆子和名波々子

<和名類聚抄 源順(934)>

菴蘆子,楊玄操、上音菴、下音閭 和名比岐 一名波々古

<箋註倭名類聚抄 10 >

本草和名云、菴蘆子和名比岐与毛伎、一名波々古、馬先和名波々古久佐、茵陳嵩嘉和名比岐与毛岐、蒕輔仁不能 詳定三草、皆同訓、源君菴蘆子訓波々古、馬先嵩茵陳嵩並訓比較与毛岐、蓋以釈薬性云茵陳嵩一名馬先也、然波々古比与毛岐之一名、則源君分訓波々古比与毛岐―レ是,又本草菴蘆子、馬先嵩、各自為条、則三区草其実不同、以馬先嵩、茵陳嵩、同為比較与毛岐亦非也,按嘉裕本草云、鼠麹草、雑米粉糕、食之甜美、生平岡熟也、高尺余,葉有白毛、黄花、荊楚歳時記云、三月三日取鼠麹汁、蜜和為粉、謂之龍舌糕、以圧時気、江西人呼為鼠耳草、李時珍曰、原野甚多、二月生苗、茎葉柔軟、葉長寸許、白茸如鼠耳之毛、開黄花、成穂、結細子、楚人呼為米麹、北人呼為茸母、故邵桂子甕天語云,北方寒食菜茸母草和粉食、是可以充波々子、今俗偽呼保宇古久佐、猶柞櫟和名波々曾也、周防謂之毛知久佐、是草和粉為餌、故有是名、讃岐謂之加宇和知波奈、与楚人呼米麹合、是草折葉則有ニレ白糸、曳之如杜仲、故又有比較与毛岐之名

<本草和名 9 草>

馬先嵩、一名 馬矢嵩一名 爛石嵩、一名 虎麻、一名 馬新嵩 和名 波々古久佐

<日本文徳天皇実録 清和―陽成(878)>

嘉祥三年五月辛巳、嵯峨皇妃崩、任午葬大皇太妃手深谷山、遺令薄葬、不山稜、先是民間訛言云、今茲三日不可造餻、以母子也、識者聞而悪之、至干三月、宮事嬰駕、是月、亦有太后山稜之事、其無母子、遂如訛言、此間田野有草、俗名母子草、二月初生、茎葉白脆、毎属三月三日、婦女採之、蒸檮以為餻、傳為達斎事、今不叢生、民之訛言天仮其口、

【古文】

<源氏物語 初音>

はかためして、もちひ鏡を差へ取り寄せて、先年の影にしるきとも書きたり。

<夫木和歌抄 藤原長清(ca1310)>

されは此鏡のもちひをさして、御像ともいひにしにや。その御形ゴギョウといへるも、御像とおなし意なれば、三日のもちひにましへし。ははこを御形といひけるハか々みもちひのことより、いてしとおもはるヽなり。

28 10>

花のさと 心をしらず 森の野に はうはうつもる ははこも在らず

和泉 式部

<後拾遺和歌集 20>

三条太政大臣のもとに侍ける人の娘を忍びてかたらひ侍けり。女の親原たち手、むすめをいとあさましくつみけるなどいひ侍けるに三月三日かのかた、三夜のもちいくへとて、いだしけるによめる

みかの夜の もちひを食はじ わずらわし 聞けば淀野に ははこ摘むなり

<曽根好忠集>

暮の春三月はじめ

ははこ摘む 弥生の母になりぬれば 聞けめらしな わが宿の桃

(和泉式部集 3)

石蔵より 野老をこせたるてばこに、くさもちいれて奉るとて、はなのさと心も」しらず 春の野に いろいろつめるははこもちゐぞ

<散木奔調集 1>

三月三日ひとのがりいつかはしける

君が為 やよひに」なればよずまさへあへのいちじにははこつむなり

<俳句>

老いてなお 懐かしき名の 母子草

高濱虚子


菩提寺へ 母の手を引き 母子草

富安風生


百歩にて 返す散歩や 母子草

水原秋櫻子


目鼻寄せ 馬漢が笑ふ 母子草

有馬彗子


1’. チチコグサ

ハハコグサと並んでチチコグサいいうキク科の植物がある。これは花が茶褐色で、ハハコグサより美観において相当に見劣りする。さらに大正時代に帰化したチチコグサモドキG,salicina L.var.asiatica Kitam.がある。

【植物】

チチコグサ Gnaphalium laponicum Thumb 漢語 天青地白

分布は日本全土、朝鮮・中国、人家近くの日当たりのよい山野に普通見られる多年草で、地上を這うように茎を出して増える。根出葉は腺形、立ち上がった茎に互生に、葉茎ともに白色の毛におおわれている。花茎は分岐しないで1025cmの高さに数本立ち、510月の長期間に順次、茎頂に密集して頭状花をつける。総苞は鐘形で、長さ長5mm 45mm,片3列で黄~暗赤褐色を帯びる、痩果長さ1mm、冠毛は3mm白色、草全体は派手でない。

{補説}

1. 根出葉は花期になっても残っている。葉の裏は特に毛が密生する。

2. 三列に並んだ頭状花の鱗片は膜質で、外側のものが広く内側のものは狭い  

3. 頭状花の中心には両性花、周囲には牝花が取り囲み、共に結実する。

【古文】

<古名録 14 野草>

ちちこぐさ 漢名 天青地白

按に酒場論云、其の後もちゐ色々にやとひもはじめの若草は、ちちこははこのむさもちゐ、手作りからにいたゐけやとみゆ、然ればちちこ草をももちとなせし也、ちちこ草は母子草に同じくして痩せたり、鼠麹草の類なり。

<倭名栞 後編 13>

ちちこぐさ 白嵩也、又河原ははこといふ、ははこぐさに対して父子草と呼なるべし、

<酒食論> 

飯室律師好飯申様

もちゐ色々に、やよひもはじめのわか草はちヽこはヽこのくさもちに用ひ、手作りにいたゐけや、かわらぬ色の松用い、千代とぞ君をいのりける、

<窮恒集>

ちちこぐさ

花の色はちちこぐさにてみゆれどもひとつも枝に有べきはなし


2. コバイモ

【植物】

コバイモ Fritillaria japonica Miq. アミガサユリ

本州は福島県~近畿地方・四国に分布し、林下に生える。2個の白色の鱗片からなる鱗茎を有し、早春芽を出し、6~7月地上部は枯れてしもう宿根草、草丈1530cm、全草は柔らかい緑色をして無毛。葉は線状広披針形で長58cm、花は4~5月、草上部に1個着く。花被片は6枚、微黄色、網目模様があり、長楕円形で長さ1.52cm、花の形は伏せた筒茶碗状で下向きに咲く。雄蕊6、雌蘂の子房は上位で3室、各室には多数の胚珠がある。蒴果は胞背裂開し、種には翼がある。地方によって、花型・花色に変種がある。

<補説>

葉の着き方は元来互生であるが、3,4枚は偽輪生する。

根は鱗塊の下部からのみ出て、ユリのように上部茎から出ない。

<近縁種>

コシノコバイモ var,koizumiana Hara

ホソバコバイモ F.amabilia Koidz,

バイモ Fritillaria verticillata var,Thunbergii Baker, アミガサユリ

家庭の花壇に植えられ、頑丈で繁殖力があるので,野生品もある。コバイモより大形で、鱗茎は肥厚して径4~5cm,草丈1m位になる。葉は細形であるが、上部にある数葉は先端が尖り、巻髭になり、他物に巻きつき倒伏しない。花は[萼+花弁]6枚で編み笠のような格好である。果実は六角形で、稜に翼がある。

[周辺]

バイモの所属するユリ科バイモ属fritllariaは、北半球に約100種知られており、日本に三種ある。

ユリ科 Liliaceae

ユリ亜科 subfam.lilioidae

カタクリ属 Erythronium

カタクリ

チシマアマナ属 Lioydia

チシマアマナ、ホソバアマナ

アマナ属 Amana

アマナ、ヒロハナアマナ

バイモ属 Fritillaria

クロユリ、バイモ、ホソバコバイモ、

ウバユリ属 Cardicrinum

ウバユリ

ユリ属 Lilium

スカシユリ、ヒメユリ、オニユリ、テッポウユリ、ウケユリ、タモトユリ、ササユリ etc

[名前]

古語

波々久利

別名

編笠百合,母百合、春百合、初百合

漢語

貝母・瓦瓚班、空菜、空草、

【古典】

<出雲風土記 秋鹿郡>

今山 およそ諸々の山野にあるところの草木は白朮 独活 女青 苦参 貝母

ははくり、貝母の異名 十月採曝午於比一云波久利

<和名抄>

貝母を訓せり、母栗の義 根の形栗に似て母の子を抱く如し。今日編み笠百合という。

<字鏡>

貝母 波波久利

【用途】

[鑑賞用]

山野草、特にコシノコバイモは茶花に珍重される。

[薬草]

貝母根: 鎮咳・去痰・排膿・止血・採乳・解毒

成分:ステロイド系アルカロイドのバーチシン(=イミノシド)、フリチラリン、ペイミニン

鎮咳作用、血圧降下、呼吸運動中枢麻痺、気管支平滑筋の弛緩、瞳孔散大のの作用のあることが確認。

Verticine (=peimine) R=H

Peiminoside R=glugocide

Fritillarine


Follow me!