Ac-01. つた

Ac-01 つた・つのさはふ・都多(つたかずら 薜葛)・角障経

I. 蔦 ツタ 地錦・薜蘿・夏蔦

II. 木蔦 キヅタ 冬蔦 

エビズル、アマズラ、アマヅル、イワガラミ、

漢語 爬山虎・地錦・蔦・葛苗

【万葉集記載】

つのさはふ

02-0135

03-0282

13-3325

13-3324


つた

02-0135

09-1804

13-3291

17-3991

19-4220

つたかずら 

02-0135




以上 8首

いはずな

06-1046

をみよ




註釈

角障経 つのさはふ =石にかかる枕詞 ツナ()サハ(多い)ハツ(這う)を続けた語においてハが同音反復のために、ハが脱落した形。石に懸かるということで、石絡即ちテイカカズラであるとの説もある。

() 02-0135

ある本の反歌に曰く


角障経 石見之海乃 言佐廠久 辛乃埼有 伊久里浜尓曾 深海松生流 荒磯尓曾…

左宿夜物 幾毛不有 延都多乃 別之来物 肝向 心乎囗痛 念乍 顧為騰 大舟之…


つのさはふ 石見イワミの海の 言さへく 漢カラの崎なる 海石にそ 深海松ミル生ふる 荒磯アラソにそ…さ寝し夜は いくだもあらず 這う蔓ツタの 別れし来れば 胆向う 心を痛み思いつつ

注釈;

言さへく=枕詞 外国人の言葉ははっきり聴きとれないことから、ここでは韓に懸かる。

韓の崎=諸説あり。「島根県邇摩郡仁摩町の海上にある韓島」「江津市大崎鼻」「那珂郡国府町唐鐘浦」など。

深海松=深いに懸かる枕詞。

いくだ=いくら。

あらず=なくて、

這う蔦の=別れに懸かる。

肝向ふ=心に懸かる枕。

() 13-3291

ある本に曰く


三好野之… 君可将思 言牟為便 将為須使不和 或書、足日木山之木末尓句是也 延津田乃帰之 或本、無帰之句也 別之数 惜物


み吉野の…君が偲ばむ 言はむ為る便方スベ せむ為方知らに ある書に、あしひきの山の梢にの句あり 延ふ蔦ツタの 行きの ある本、行きの句なし 別れのあまた 惜しきもの

註釈;

はふ蔦の=行く・別れに懸かる枕詞。 

あまた=程度を表す副詞

() 17-3991

布勢の水海に遊覧する賦一首 この海は射水郡の舊江村にあり


物能乃敷能 夜蘇等母乃乎能…宇麻奈米氏 宇和久知夫利乃 之良奈美能

安里蘇尓与須流 之夫多尓能 佐吉多母登保理 麻都太要能 奈我波麻須義氏

宇奈比河波 伎欲吉勢其等尓…多麻久之気 布多我弥夜麻尓 波布都多能

山伎波和可礼受 安里我欲比 伊夜登之能波尓 於母布度知 可久思安蘇婆牟


物部モノノフの 八十伴ヤソトモの緒の…馬並めて うちくちぶりの しら波の 荒磯アリソに寄せる渋谷シブタニの 崎徘徊サキトモマワリ 松江田マツエダの 長浜過ぎて 宇奈比ウナヒ川 清き瀬ごとに

鵜川立ち 玉匣タマクシゲ 二上山フタガミヤマに 延ハハふ蔦ツタの 行くきは別れず あり通カヨひ いや毎年トシノハに 思うどち かくし遊ばむ

註釈;

布勢の水海=富山県氷見市に昔あったとする大きな湖、現在は開拓されて、十二町潟にその残痕を偲ぶのみ。また氷見潟とも言う。

物部=八十にかかる枕詞。

八十伴の緒=文武の百官。

渋谷=二上山から東北部の荒磯に注ぐ渓谷の名前。

延ふ蔦の=別るに懸かる枕。

あり通い=いつも通って。

【概説】

集で歌に詠われているツタは、全て枕詞としてであり、而してそこには2つの形がある。

(1) つのさはふ このつのは若芽のことであり「つの障、はふ」の意とも、またつる草で“つのさ這う”の意とも、石イワに懸かる、

(2) 延ふ蔦 蔦は、伸びる先が分岐することから「別れる」「おのが向き向き」に懸かる。でも伸びた蔓先が絡みあうことから、「別れてもまた逢う」に懸かる。

我々がいう蔦ツタは、植物界で Ⅰ.ブドウ科ツタ属と、Ⅱ.ウコギ科キズタ属との別個の植物の二種があり、これを指すのであるが、俗に拡大解釈して蔓性の植物を総じて斯く言う。「蔓性の草の総称を蔦葛と云うこともある」。蔦はツタは他物に絡んでこれに伝わり、蔓を伸ばしつつ生長する。この秋の紅葉は素晴らしく、モミジとともに歌によく歌われるところである。

山姫の 涙の色もこの頃は 分きてや染むる 蔦のもみじ葉

増鏡 清忠

蔦かえで しぐれぬひまも 宇津の山なみだに 袖の色ぞこがるる

十六夜日記

樹林のたまたま端にある樹木は、ツタの来襲を受け、ツタが幹を伝わって伸長し、ついに母樹を枯らしてしまう。が、壁や石垣にも這い登り石積の強度を増すということで、故意にツタを絡みつけた構造物を見る。西欧の古い城壁やレンガ建に這わせてあるが、これはウコギ科のキズタであって常緑である。ところが近年になって、古跡などで見事な紅葉の景観を呈するのを見るが、是は日本のツタを移植したもので、1860~62年にジョン・グールヴィチがイギリスに渡植したとの記録がある。

戦前の昔のはなし、ある処の銭湯で、赤レンガの煙突が古くなりこれを撤去しようとするが、付近にある民家に倒れる恐れがあり困っていた。著老の薦めで、蔦を数本植えたところ蔓が伸び、3~4年で煙突に絡みつき、頑丈に補強したそうである。是を聞いた付近の大家さんも、自宅の古屋が地震で倒れないようにと蔦で補強したそうである。そして数年、家屋を蔦が覆い、夏は涼しいし秋は紅葉を愛でて悦に入っていたところ、困ったことが起きた。それは、あまりにも自然環境が良過ぎて、蚊や蜂が多く、ついに蛇が住み着いたのである。それに、家の中は湿度が高く、畳に茸が生えるようであったそうナ。両方とも戦災で無くなってしまった。

<常陸風土記 香島郡>

神社の周囲は卜部氏が住所、…嶺の頭に家を作り、松と竹とは垣を守る。渓の腰に井を掘り、蔦葛は壁の上を隠す。

<下学集>

蔦蘿ツタカズラ

<書言字考節用集>

絡石 蘿葛

<日本釈名 下草 >

地錦ツタ ツタフ也、木の上を伝うものなり

<本草和名 30>

絡石 都多

7->

落石 一名石磋、石魚菱、略石、明石、領石、懸石、耐冬、石血、石龍藤、鱗石、雲母、雲華、雲珠、雲英、破血苺、和名 都多

<大和本草>

地錦 葉は衣の紋に似たるツタに似て、冬も葉落ちず、皆本草にいへるがごとし。和俗、壁生草といふ。秋は紅也。又、常のツタは是に似たり。冬は葉落つ。

<倭名類聚抄20 >

絡石 本草云、絡石一名領石 和名 豆太 蘇敬曰、此草苞石木而生、故以名之、

<箋注倭名類聚抄 10>

抄 證類本草 引作其苞絡石木而生故名絡石、本草和名引、作絡石木而生、故以耳、此所引脱落絡字、蘇敬又云、此物生陰湿処、冬夏常青、実黒而円、其茎蔓延、撓樹石側若在石側、若在石間者、集細而円短、撓樹生者、葉大而薄、人家亦種之、俗名耐冬、山南人謂之石血、別録曰之石龍藤、陳蔵器曰、絡石生山之陰、与薜茘相似、

更有木蓮石地錦等十余種藤、並是其類、若石血絡石殊語爾、石血葉尖一頭赤、絡石葉円生青、蜀本図云、生木石間、凌冬凋葉似細橘、蔓延木石之陰、茎節著処、即生根鬚包絡、花白子黒、陳蔵器云、地錦、葉如鴨掌、藤蔓著延地、節処有根、亦縁樹木、冬月不一名地日禁 蘇恭註曰、絡石血、亦此類也、

ツタは、「蔓で以って他物に伝わり昇っていく形」の言葉であって、特定の植物でなく蔓状の植物を総じて言っていた時代もあるが、紅葉するツタが目立つ存在するであるので代表して左様にいうようになった。ところで、ツタには2種あり、その①は落葉性のナツツタParthenocissus tricuspidata Planch.で、 その②は常緑性のフユツタ(キヅタ)Hedera rhombea Beanである。両者は全く別科のものであり、さらに集で云うのはテイカカズラTrachelospermum asiaticum Nakaiと思われる節があるし、イワカラミSchizophragma hydrangeoides Sieb.et Zucc.ともとられる。また、古語に甘葛アマカズラ・尼甘蔓アマツル・止止岐トドキ・とあるはアマチャズルGynostemma pentaphyllum Makinoであろうと思われる。

余談であるが、甘味料について、現代の砂糖はサトウキビ・サトウダイコン・カエデ・ココヤシなどの液汁を原料にして製するが、古代の甘味料はアメ・ハチミツ・ホシガキ・アマズラであったとされる。ここでアマズルは何物なるか?昭和2年白井博士は、紀州那智山でこの山でツタから冬季に甘汁を得ていることを知究している。混同されるものに、ウリ科のアマチャヅルがあり、成人病の対策に漢方薬として注目されている。その成分は朝鮮人参のジンセナイド(トリテルペナイド)に似ており、チョウセンニンジンには11種の化合物が発見されているが、その4種がアマチャズルに共通して存在し、鎮咳・去痰・滋養の目的に煎薬に配合される。

<大言海>

あまづる 土佐にいうアマカスセラ、古の甘味料を取りし植物の名。後にいう絞股藍なるべし。古昔砂糖のなかりし時に甘蔓の茎葉の汁を取り、煎練して食物に甘をつける料として、甘葛煎といひ、それを旧名にて あまづら ととひしき。味煎ミセンと云うも是なり。甘葛煎または合薫煎にも香と和して用いられき。

<和漢三才図絵>

鳥蔽苺、俗云う。豆太。本綱に、墻塹の間に多し。藤ツル柔らかにして稜あり。一枝一鬢大凡五葉、葉長くして光り、粗歯あり、面青く背淡し。白斂の葉のごとし。故に鳥斂と名づく。七八月苞を結び、簇をなす。青白色、花の大きさ栗の如。黄色四出、実を結ぶ。龍葵イヌホウズキの子の如し。生は蒼く熟すれば紫なり、内に細子あり。云々 是大和本草にいふ夏蔦也。秋に至りて葉深紅、愛すべし。

<本草和名 20

千歳蘽汁、阿末都良

<和名抄 20-24>

葛類 蘇敬本草云、千歳蘽、云々、得千載者、華大如椀、阿末豆良、俗用甘蔓」華ハ茎ノ課、韻会蘽、蔓也。

ほかに、ツタと呼ばれる植物は、イワガラミ、オオイタビ、ヒメイタビ、ツタントモ、テイカズラ、ツタウルシ、ヘクソカズラ、ゴトウズル、ツルマサキ、サルナシ、サルオガセなどが、地方方言で左様呼ばれている。

日本名のツタの語原は()蔓が長く”伝う”の意により「和句解・日本釈明・倭訓栞・言元梯・滑稽雑談」()ツクツナ”付綱”の反「名語記」(ⅲ)”つらね結ぶ”に用いたところから「日本語原」()物を繋ぐ”ツナ”の義「古事記伝」()ツタヒハヒ“伝這”の義「日本語原学」()ツツラ”葛蔓”の義「明言通」などと事典類は解義している。蔦の訓はホトでこれはホヤ寄生の訛りである。樹幹にミッシリと着くさまを寄生木に見誤りか

<時珍>

蔦は他木に寄寓して生ずること鳥の上に立つが如し、故に寄生寓木蔦木と曰う

<倭訓栞 前編16 >

つた

倭名抄に絡石をよめり、されど絡石はテイカカズラ也、或いは蔦字をよめれど、新撰字鏡にホトと訓じ、説文に寄生也といえば、やどり木なり。和名抄豊岡築城郡に樢木あり、集韵に樢同蔦とみゆ、地錦を訓ずべしといへり、海道記に蘍を読めり、ツタカズラともいひて、蔓延するものなれば伝ふの義なり。

漢名で、蔦蘿・地錦・爬山虎・夜承などと難解であり、そして絡石・落石・石竜藤・明石・石磋鱗石・雲母・雲英と石と雲に係る言葉が不思議と多い。

<東雅15 草卉 >

絡石 ツタ

和名抄に本草を引きて、絡石一名領石、ツタといふと註せり、万葉集抄にはシハヅナと云ひしはツタ也と釈せり。イハヅナは石綱也、猶絡石といふが如し、ツタの義不詳。

<重修本草綱目啓蒙 15 蔓草>

木蓮 地錦 ツタ マツナグサ 一名地朕 承夜 夜光

山野に皆あり、其蔓樹石土塀に着き鬚根を生じ、物に纏撓須。春嫩葉を旧藤より互生す。形三尖にして鋸歯ありて滑沢也。小なる者は二三寸大なる者は一尺に盈ず、夏葉間に花を生ず、淡黄色数十攅簇す、五出にして二分許、後円実を結ぶ熟して秋に至りて其紅葉美なり、故に人家に植えて、樹身或いは屋根に延布せしめて之を賞す。

ツタとキズタは往々にして混同され、或いはハッキリと分別されないこともある。

<枕草子>

いつまで草は生ふる所いとはかなくあはれなり、岸の額よりも是は崩れや菅也、真の石灰などにはえおひずやあらんと思ふぞわろき

<本草綱目>

地錦樹下の生ず、葉鴨掌の如く藤蔓地に着く、節のところ根有り、亦樹石に縁る、冬月死なず。

両方のツタを明確にせずとも、日本の古文には多く引用されていて、成語になっているのもある。

つたの庵イオ

蔦が這い廻って、それに隠れている庵→隠者の隠れている庵

<壬仁集> 宇津の山 月だにもらぬ蔦の庵に 夢路絶えたる 風の音かな

つたの下道

ツタの細道に同じ

<新古今> 都にも いまや衣をうつの山 夕霧はらふ つたの下みち 藤原 定家

つたの細道

ツタが生茂って巾が狭くなっている小道、伊勢物語の故事より、静岡市丸子と岡部との境の宇津山越え(宇津谷峠)を指す

<伊勢物語 9 > 宇津の山にいたりて、我が入らむとする道は、いと暗う細さに、つたかえては茂り、

<滑稽本 東海道中膝栗毛> 宇津の山にさしかかりたるに、雨は次第に篠を乱し、蔦の細道心ぼそくも

<名所百首> 宇津の山さこはかねて聞きしかと霞をわくる蔦の細道

つたの蔓恨ツタウラミ

蔓は係累の意、壁などに這い茂る蔦を切り除くことから、男女の関係を切ろうとする気持ちを女の係累が同情し恨むこと

<雑俳 かぐや姫> 腰元も 旦那へ蔦の蔓うらみ 

つたの身

蔦は他物に絡みつき、其れを頼りに生きていく身、助けを求める身

<大和物語> たちよらむ このもともなき蔦の身はときながらに秋ぞかなしき

つたの葉

蔦の葉の紅葉

<俳諧 忍掏> 蔦の葉は むかしめきたる紅葉かな

つたの若葉

晩春の頃出葉する蔦の若葉

<俳諧 類題発句集> 上塗に追われるる蔦の若葉かな

<無言集 下3> 蔦の若葉など秋夏の季をもつ草も、若葉とすれば皆春なり

つたの紅葉

紅葉したつたの葉 つたもみじ

<山家集> おもはずによしある賎の棲家哉 つたのもみじを軒に這はせて

<新勅撰 秋下345> あきこそあれ人は尋ねぬ 松の戸を いくえも閉じよ 蔦のもみじば

植物

I. ブドウ科のツタ

世界に約11600

ブドウ科 Vitacea

ブドウ属Vitis

ツタ属Parthenocissus

ノブドウ属 Ampelopsis

ツタ属 Parthehocissus

Parthenos=ギリシャ語処女 + kissos=キツタ

落葉まれに常緑蔓性潅木、巻ヒゲの先端は吸盤となる。葉は互生、三出また掌状、複葉・長柄。花は両性、複集散花序で葉と対出し時に枝の上方に集り円錐花序を為す。漿果は青黒色、種子は1~4個。北米・メキシコ・東アジア・ヒマラヤに 10種あり。

ツタ Parthehocissus tricuspidata Planch

(P. .Thunbergii Nakai, Ampelopsis tricuspidata S et .Z., Cissus Thunbergii S.et Z., Vitis mconstans Miq., V. Taquett Lev., Pseudera tricuspidata Rehd., P. Thunbergii Nakai )

ナツヅタ・コウヨウツタ・アマヅラ・マツナグサ・カベクサ・ニシキヅタ・モミジヅタ・ツタカエデ・ツタカヅラ・モミジヅル・メハジキ・メハリカズラ・イシガラミ・タムチャインギトング*・トルタムチャンギ*・タムチャンノンフル*(*朝鮮語)

英語: Chinese Creeper, Japanese Creeper, Japanese Ivy, Fig=leaved Vine, Toadflax

独語: Dreispitzige, Jungfernrebe

漢語: 地錦、玉葛、蔦、薜茘、蘿、山葡萄、 地咲、夜光、承夜、領石 [絡石]、     

性状 北海道・本州・四国・九州、朝鮮、中華国に分布。山野に生える落葉蔓性木本。まれに観賞用に鉢植にされる。主幹は径10cmにも、幹の高さ20m以上にも及ぶものがある。枝は無毛。若いのは葉柄痕を残し可撓性であるが、老化すると硬化し樹皮は黒色である。巻ツルは葉と反対に出て先端に円形に吸盤となる。枝は長・中・短の3段の繰り返しで伸びる。葉には2種あり、長枝上の葉は広卵形~2・3裂の三小葉、短枝上の葉は3裂心脚、縁は不整の鋸歯あり、裂片は鋭頭、両耳は丸い長巾共に5~12cm、両面に毛が生える。長柄をもちこの柄は上部に関節があり、落葉のときまずこの上部が落ち次に全柄が落ちる。このため複葉であるという意見もある。花序は短枝につき、花は小型で黄緑色、6~7月に咲く。花床は子房と合着し、明らかでない。果実は球形で径5~7mm、秋の末に藍黒色に熟し表面に蝋状の白い粉がつく。果軸は紅色。種子は1~3個 黒褐色、長さ4~5cm長さ45mm、3陵がある。

補記.

. 明るいところでは木によじ登り、暗所では地上を這う。光を求めて進み、木の高所において花をつける、光寄生、ツルの先端は生長ホルモンに敏感で、陽光に対して、負の屈光性を示しながら生長する。

2. 茎の主軸の先端は花軸また吸盤となり一旦止まってしまい。そこに脇芽が新しく伸びる。是を仮軸分枝といい、各節の芽の反対側に付着根は着かない。付着根は分岐し、先端は粘液を出して吸い付き捩り登る。この付着根も吸盤も元来主軸であって、仮軸分枝の結果できたものである。

.茎の節間の長さは不規則である。芽の上の節は最短ca2.5cm. その上が最長4.5cm,次の上が中程度3cmである。葉には二つの型があり、若くて細い枝に着く葉は3出複葉で、短枝詩上につくものは単身複葉となる傾向がある。


変種

Var. Veitchii Rehd.

<草本稀品家雅見> 極白斑地錦に 夏のうちよく紅をかけふにつけなし、見事也。草木錦葉集のもの永縞黄布のつた、紅葉づた、水の夏つた、長左衛門夏つた布

[古典]

<詩経>

莫莫葛藟 施子条枚 「大雅 草麓」

緜緜葛藟 在河之滸 終遠兄妹 謂他人父 「欧風 草麓」

葛与女蘿 施于松柏 「小雅・頍弁」

<伊勢物語>

宇津の山に至りて、わが入らむとする道はいと暗う細きに、蔦楓は茂り、もの心細く

<源氏物語 東屋>

箱の蓋に、紅葉蔦など折り敷きて、故なからず。

<枕草子>

あてなるもの 薄色に白襲の汗衫のかざみ。かりのこ。削り氷にあまずら入れて… 

<仮名草紙>

つたの細道を睨の介と竹斉は、あなたこなたへぶらりしゃらりと

<拾遺愚草>

うつの山わが行くさきもこととをさったの若葉に春雨ぞふる

<山家集>

おもはずも よし有る賤が住家かな つたのもみぢを軒にははせて

<新古今和歌集10-982>

都にも いまや衣を 宇津の山 夕霜はらふ 蔦の道

<和和泉式部集>

紅葉する 蔦しかかれば おのずから 松もあだなる 名ぞ立ちぬべき

和泉式部

<玉葉和歌集 803 >

年をへて 苔にむもるる 古寺の 軒に秋ある 蔦の色かな

慈円

<夫木和歌集 156>

をしなべて みな住吉の 松の中に秋をこめたる 蔦の色かな

慈鎮和尚


あしのやの 蔦はふ軒の むらしぐれ をとこそたてね 色はかくれず

藤原定家


うつの山 越えし昔の 跡ふりて 蔦の枯葉に 秋風ぞふく 住之江にかかれる蔦のもみじばは なみもいくしほよりて染まるらん

藤原良経

<謡曲本 定家>

露と消えてももつたなや蔦の葉の葛城の神姿はずかしや由やな

遊行師>

老木はそれとも見えわかず蔦葛のみ這ひかかり…

<素月集>

谷間より 峰まで這へる 蔦かずら 落ち来る霧に見え身見えずみ

尾上柴舟

<俳諧>

かけはしや 命をからむ つたかずら

芭蕉


蔦植ゑて 竹四五本の あらしかな

芭蕉


夜に入れば 灯のもる壁や 蔦かずら

太祗


天狗風 のこらず蔦の 葉裏かな

蕪村


家一つ 蔦となりけり 五月雨

一茶


蔦の葉の 二枚の紅葉 客を待つ

虚子

用途

景観用植樹、

平安時代にこの樹液を甘味料として用いた。

薬用;利尿・鎮神経薬

II. ウコギ科のキツタ 

世界にca60900

ウコギ科 Araliaceae

タラノキ属 Aralia

キズタ属Hedra

フカノキ属 Schefflera

タカノツメ属 Evodiopanx

ウコギ属 Acanthopanax

ヤツデ属 Fatsia

カクレミノ属 Dendropanax

ハリブキ属 Oplopanax

ハリギリ属 Kalopanax

キツタ属 Hedra

常緑蔓性、気根にて他物に纏絡し伸長する。葉は互生、長柄、葉の形は全縁または3~7裂その形は時により変化する。革質、ときに星状鱗毛をつける。花は単性又散形花序、小型で5弁、帯緑色、不著明。果実は略球形、漿果様核果。種は3~5粒。アジア・欧州・北アメリカにca 7種。

キズタ Hedera rhombea Bean

(H. rhombea S.et Z., H.Helix L..f.rhombea Miq., var. japonica Lav., var. colchica Makino, H. Helix Thunb., H. colchica Seem., H. japonica W.Paul, H. japonica Tobler, H.Tobleri Nakai.)

フユヅタ・カベクサ・イツマデクサ・カンズタ・カベツタ・コマノキ・コマ・ツタ・オニヅタ・

オカメヅタ・ソンガク・*カマックサル・*タムチャンナム(*朝鮮語)

英語: Ivy, emeiner Efeu; Lierre commun; Dudela, Lablab, Halbamber, Kurol,

学名: Hedera=旧ラテン語のツタ、rhombea=菱型の(葉の形による)

漢語: 常春藤、木蔦、壁生草、土鼓藤、蛙蔦、百脚蜈蚣、長春藤     

性状: 北海道・本州・四国・九州、流球、台湾、朝鮮、に分布。山野の陰地に生える。まれに観賞用に植培にされる。常緑潅木、気根で他物に絡み、蔓状に伸びる。幼枝と葉に帯黄色星状鱗片あり、葉は互生、柄は2~5cm, 葉は厚革質全縁、濃緑色、無毛光沢あり、広披針形、微鈍頭、長3~6cm,24cm。花は1011月、頂生、散形花序に数個つき黄緑色、5弁小花径46mm.

漿果は球形、径6810mm,翌春に黒熟す。種子は数個。発芽性よし。

補記.

. 本種はあまり鑑賞用に用いられないが、変種のフクリン・シロバキズタはよく見る。又戦後輸入されたアイビー(セイヨウキズタorヘドラ)Hedra Helix L.は活花題材としてよく用いられる。

2. 茎の先端から粘液を分泌して、付着しながら木に登っていく。

3.茎に二つの型があって、幹と茎との区別か。葉にも二型がある。革質のものと肉厚の薄い型である。

4、若い茎は水に指して置くと、容易に発根する。

変種

ナガボキヅタズ f. pedunculata Hatusima

ナガバキヅタ f. oblongifolia Hara

シロハキヅタ var. argentea Nakai

フクリンキヅタ var. variegate Nakai

[古典]

<枕草子>

いつまで草は生ふる所いとはかなくあはれなり、岸の額よりもこれはくづれやすげなり、まことの石灰などには生えおひずやあらんと思ふもおかし

<山家集>

壁に生ふるいつまでぐさのいつまでかかれずといふべき篠原の里

<本草啓蒙>

常春藤、藤蔓長く纏ふ、葉互生し形円扁にして尖りあり、或三尖五七尖なるあり、其五七尖なるものはモミヂカズラと呼ぶ、皆冬かれず。深緑色にして厚し、その葉辺紅白相雑るものをニシキツタと呼ぶ、年久しきものはその藤大にして木の如く或いは直立す。故にキズタと呼ぶ。葉形変して一尖にして狭くなり、始めの葉とは形甚だ異り夏月葉間に花を生ず。小にして白し数十族生す、後円子を結ぶ、大きさ二分許熟して黒色中に紫汁あり、

<大和本草批正>

地錦、ツタ、ニシキソウも地錦と云。救荒本草にも地錦苗あり、ムラサキケマンのことなり。ツタは葉円にして先尖り鋸歯あり、凡三様に変ず、春は三尖にしてエビヅルの如く夏葉岐をなし胡枝子のことし、夏後の葉、円にして一尖あり、葉大なるは一尺許りあり、冬月葉梨(冬月も葉落ちず)これは常春藤なり、壁生草もまたフユツタの名有り(秋は紅なり)是常のツタなり、畢竟落葉せんとして紅色に変ずるなり、この条二物を混説す。

<本草綱目>

常春藤、林薄の間に生ず、蔓を作し草木の上に繞るその葉頭尖、実を結ぶ正月熟する時碧色の如し、小児その藤を採りて地に打ち鼓声を作す故に土鼓と名づく。

貝原益軒(1630~1714)

<大和本草>葉は衣の紋につくるツタに似て冬月も葉はおちず、皆本草にいへるごとし、倭俗壁生草と云、秋は紅なりまた常のツタは是に似たり冬葉は落つ。

とツタとキズタを混同している、かれの記書には往々にして誤記が多い。

セイヨウキズタは明治末に日本に入り、葉の変種を創案している。欧州ではギリシャ・ローマ時代からアイヴーという名の植物が神話伝説に登場する。酒神バッカスはこのツタで飾られた槍を持っている。この樹で作られた冠は勝利詩人の象徴として送られ、とくに黄色の実をつける品種は賞愛された。ギリシャの結婚式で牧師は新婚夫妻にこの花冠を被らせる風習がある。

用途

観賞用の他あまりない。

ある本に、本種は有毒と記述してある。