Ac-03. はまつづら

Ac-03 はまつづら・波麻都豆良・浜葛・

ハマゴウ・濱荊

荊蒲、海埔姜、荊埔、演香、小荊

漢語 蔓荊、白埔姜、山串藤、刺温稜、荊蒲

【万葉集記載】

14-3359 以上 1

() 14-3350

相聞 駿河国歌  五首のうち

駿河能宇美 於思敞尓於布流 波麻都豆良 伊麻思乎多能美 波播尓多我比奴

駿河の海 磯辺おしべに生ふる 濱つづら 汝いましをたのみ 母に違たがひぬ

註釈;

はまつづら=長く絶えない事の意味をもたしめる

磯辺イソベ=於思敞オシベ イ列音とオ列乙類音の交代する例である。

概説

正名にはまつづらと称する植物は無い。しかし歌の趣意からして海岸の砂浜に生える茎の長く延びる植物である。海浜植物は概して熱い日射に曝された砂浜に生育するが、焼ける様な砂であっても、一尺も掘れば水分もあり、結構冷えている。それで海浜植物は砂に潜り長い蔓を伸ばして繁殖する。それで一般に浜辺に生えている蔓草をはまつづらと凡称することがある。

一方ツヅラとは葛藤アオツヅラフジのことで、この蔓を以って葛籠を編んだので、葛籠ツヅラコもツヅラという。この葛籠が解けた緯は曲がった折目のついた形になる。故に登山道などのクネクネ曲がった道をつづら折りと云い、唯単純にノッペラボウに長いのではない。昔はこの長い蔓で以って髪を整えたので、頭髪を整えたり縛ったりする紐状のものをカズラと言った。

[はまつづら]を辞書で繰ってみると

<大言海>

はまつづら 浜辺に生える青かずら

<広辞苑>

浜辺に生えている蔓草

<日本国語大辞典>

一説にクマツズラ科の落葉低木ハマゴウとされる。

他方、{はまかずら}については

<大言海>

浜葛 蔓荊 漢木の名 はまばひ に同じ

<日本国語大辞典>

浜葛 植物はまごうの異名

<重訂本草綱目啓蒙(1847>

漢木「蔓荊」

<和名抄>

はまくさ はまかずら はまごう 佐州方言 仁ばえひるがほ はまがんび はまひるがほ

<新撰菟玖波集’(1495)> 

くるしき袖に浪もかけけり 枯ぬるか人もこぬみの浜つづら

専順

即ち、”はまつづら”はハマゴウである。ところが、本種を万葉植物として取り上げた例は少ない。権威ある松田修先生並び若松汐子先生もこれを取り上げていない。ところが <上原敬二著 樹木大図説S364月 有明書店発行> の記述にみえるのみであったが、近年のもので、高岡市万葉歴史館2000年カレンダーに写真が載っている。

植物

クマツヅラ科 Verbenaceae

草本・低木・高木

世界に約100属3000種、日本に6属28

g

カリガネソウ属

Caryopteris

カリガネソウ、ダンギク

g

クマツヅラ属

Verbena

クマツヅラ

gw

イワダレソウ属

Lippis

イワダレソウ

g

ヒルキダマシ属

avicennia

ヒキダマシ

g

シチヘンゲ属

Lantana

シチヘンゲ

w

ムラサキシキブ属

Callicarpa

ムラサキシキブ・イリオモテムラサキ

w

クサギ属

Clerodendron

クサギ・ヒギリ・イボタクサギ。

w

ハマクサギ属

Premna

ハマクサギ・タイワンウオクサギ

w

ハマゴウ属

Vitex

ハマゴウ、ミツバハマゴウ

ハマゴウ属 Vitex

世界に約1000

低木また高木また匍匐性

葉は対生また3出輪生 単葉or掌状複葉

花は白色・帯紫色・帯黄色、2強雄蕊

子房2→4室 核果、蕚保存

ハマゴウVitex rotundifolia L. f..

( V.. ovata Thunb., V, trifolia L, var, simplicifolia Chammp., var. unifoliata Schau.,var, ovata Makino, V, trifolia Hemsl.)

ハマビワ・タツノキ・ハマシキミ・ハマカズラ・ハマボウ・ハマンボウ・ハマヤナギ・ハマツバキ・ハマグミ・ハマツヅラ・ハマハヒ・ホウ・ハマバヒ・マンケイシ・ハマグワ・ホホノヅラ・ハマコウゴ・ハマハギ・ハマホウ・ホウノキ・スンビキナム

蔓荊、白埔姜、山串藤、刺温稜、荊蒲、海埔姜、荊埔、演香、小荊、陸続丸、僧法実、黄荊、大荊

本州・四国・九州・対馬・琉球・小笠原の暖地の海岸に産し、フィリッピン・オ-ストラリアにまで分布は達する。落葉(無霜地では常緑)潅木、高さ1~4m幹径0.15m、茎は伏生して接地すれば節から発根し、傾上する。枝は4陵、幼枝には短い灰白色の軟毛がある。葉は対生、短い柄有り、葉の形は広卵形・広楕円形、全縁、革質、鈍or円頭、楔部、上面に帯白色の軟毛、下面は銀白色の軟密毛で覆われる。大きさ長2~5cm,1.5~3cm。葉に香気あり、頂生葉はときに大きい。花は6~10月、長7~15cmの円錐花序となって頂生する。花は筒状唇形、上2裂・下3裂、花冠内面は青紫色、外面は白色。核果は球形。径5=6mm,初冬に黒熟し宿存蕚あり、

補注 

. 幹は円形で、茎は四角である。

. .葉の形は変化に富み、裏面は軟毛が密生し、白色に見える。

3. 葉は香りがあって、枕に入れると熟睡すると言われる。果実は薬用に供される。

4. 枝・葉を粉末にして、線香をつくり、こを浜香といった。

5. 滋賀県野州郡中州村の菖蒲海岸に大群落があった。

6. 穂がなく、淡赤色で芯が黄白色のものをニンジンボク V, cannabifolia Sieb et Zucc.

変化種

シロバナハマゴウ

f. albescens Hiyama

シロタエハマゴウ

f. Uyekii Honda

カワリバハマゴウ

var. heterophlla Makino

ヤエヤマハマゴウ

Var. bicolor Moldenke

ミツバハマゴウ

Vitex trifolia L.

古典

<紀州採薬記>

蔓荊、海辺砂地に多し、高ニ三尺叢生す。冬葉なく、季春新葉生ず、形円くして大きさ寸許両対す、葉背白茸有り、六七月梢間に穂をなし、五弁淡紫花を開く。花後実を結ぶ。大きさ碧桐子の如し、色黒し、薬用にす。惣して香気ある故に線香を制するに用ゆ。ゆえに浜香またハマキシミと云う。

<如庵本草記聞>

蔓荊、海浜砂地に多くこれあり、皮をとりて香と為す。莽草に勝る。今人家以って香となす。世俗線香下品となすの方莽草、蔓荊子皮、木蘭、三味を以ってすることあり。

<本草一家言>

蔓荊子 佐州方言浜香、土人葉を取り、搗きて末となし抹香の代う

<和漢三才図会>

本綱蔓荊子水浜に生ず高さ四五尺節に対して枝葉を生ず。小楝に類して其枝小弱蔓の如し、夏に至りて繁茂す、花ある穂をなす淡紅色芯黄白色、花下に青蕚あり秋に至りて子を結ぶ、黒斑大きさ梧子の如くにして虚軽、冬は即ち葉凋む。按ずるに蔓荊子は形状上の如し、但し花黄色の単弁頗る木槿に似る。花は穂をなすといふ者とは同じからず。紀州に出るもの良し、播州の産之に次ぐ。

用途

海浜の砂防・土留のために植えられる。挿木は容易。葉茎を乾燥し粉末にして練り固め、線香にする。枕の詰め物にする。

果実を緑色のうちに摘みとり、乾燥したものが蔓荊子Vitcis Fructs である。蔓茨子は煎液は頭痛・感冒・関節痛に、また浴湯料として用いる。

成分;

精油、α-pinene, camphene, terpineol acetylestel,;

モノテルペンagnuside

アルカロイドvitricine 0.01%

フラバノール誘導体 vitexicarpine