Ad-04. かや

Ad-04. かや

草・刈草・可流加夜・禰白路高茅・武路我夜

茅・萱 「カヤ」 ススキ・オギ・アシ・カルカヤ・カリヤス 

漢語 茅ボウ・茆ボウ

【万葉集記載】

01-0007美草

01-0011

02-0110苅草

03-0396草原

04-0780


07-1337

11-2763苅草

12-3065 苅草

14-3497禰白路高茅

14-3499可流我夜


14-3543武路我夜

16-3887草苅




以上12首

(壱) 01-0007

明日香川原宮御宇天皇 額田王の歌


金野乃 美草苅葺 屋杼礼里之 兎道乃宮子能 借五百磯所念


秋の野の み草くさ刈り葺き 宿れりし 宇治の京みやこの仮廬かりいほし思ほゆ

註釈:

この歌で草を”くさ”と呼んでいるが、葺くのであるから”かや”としてよい。金野を秋の野と訳した理由は、木・火・土・金・水・を春・夏・土用・秋・冬と当てて、金は秋になる、 

宇治=京都市宇治、 

みやこ=宮のあるところ、 

<万葉集抄> みくさとは”すすき”なり。この歌点にも或いはおばなかりふさとも、或はみくさかりふさとも点之、此歌にはみくさと点せる殊宜也、みくさといふはもみもみの草の中に、たかくおおしき草なるがるへに、真草の義にて、みくさと云べし、難云、たかくおおしきによらば 萩草等また之あり。何ぞかれをみくさと不云乎、答云、たとひその義もありぬべしと古賢者殊秋のはなすすきを賞せり。

(二)01-0011

中皇命紀伊の温泉に往す時の御歌 三首の一


吾背子波 借芦作良須 草作良須 草無者 小松下乃 草乎刈核


吾背子は仮芦かりほ作らす草かやなくは小松が下の草くさを刈からさね

註釈:

中皇命なかつのすめらみこと=間人王女か 

紀伊の温泉=白浜油崎温泉

() 04-0780

家持、さらに紀女郎に贈る歌 五首の一


黒樹取 草毛苅乍 仕目利 勤知気登 将誉十万不有


黒木くろき取り 草かやもかりつつ 仕へめど 勤いそしき奴わけと 褒めむともあらず

註釈:

黒木取り草も刈=黒木と茅とは、屋根を作る材料である。

勤しき=勤勉に

() 07-1337

譬喩唄 草に寄せる


葛城乃 高間草野 早知而 標指益乎 今悔拭


葛城の 高間たかまの 草かや野 早知りて 標しめ刺さましを 今ぞ悔しき

註釈:

葛城の高間=奈良県御所市高天、寝るに懸かる、 

標刺さましを=占有して、シメをたてばよかったものを 

() 12-2763

寄物陳思 ある本に曰く


紅乃 浅葉 乃野良尓 苅草乃 束之間毛 吾忘者菜


くれなゐの 浅葉の野らに 刈る草かやの つかの間も 吾をわすらすな

註釈:

くれないの=色・写し・飽く・浅いなどにつく枕詞、ここでは浅葉にかかる枕。

浅葉=場所不確なるも或る地名。倭名抄に武蔵野国入間郡浅羽安佐波とある。また、静岡県磐田市浅羽町か。 

() 14-3497

或る本にいわく


可波加美能 禰自路多可我夜 安也爾阿夜爾 左宿佐寐弖許曾 己登爾弖爾思可


川上の 根白高草ねじろたかがや あやにあや さ寝て寝て こそ言に出るにしか

註釈:

川上の根白高草=河上に生える根の白く背の高いカヤ

あやにあやに=魂も失って、怪しいの繰り返した語

さ寝てさ寝て、言に出しか=一度重ねて共寝した下からこそ、ひとの噂になったのに 

(七)14-3499

或る本にいわく


乎可尓 可流加夜能 麻許等奈其夜波 祢呂等蔽奈香母


岡に寄せ わが刈る萱の さね萱のまことなごや 寝ろとへなかも

註釈:

岡によせ=岡で寄せ、

さね草=根草、サは接頭語、練にかける。

寝ろとへなかも=ヘナはイワヌの訛り。

() 14-3543

或る本にいわく


武路我夜乃 都留能追美乃 那利奴賀尓 古呂波伊敞持母 伊末太年那久尓


むろがやの 都留つるの堤の成りぬがに 児ろは言へども いまだ寝なくに

註釈:

室草の=地名であるとの見方と、枕詞であるとの見方がある。 

都留の堤=山梨県都留郡、都留川の堤防、

なりぬがに=出来上がったように

() 16-3887

物に怕おそるる歌


天尓有哉 神楽良能 小野尓 茅草刈 草刈波可尓 鶉乎立毛


天なるや 神羅良ささらの小野に 茅草ちがや草刈りばかに 鶉うずらを立つも

註釈:

神楽久の小野=天にあると考えていた野、 

草刈りばか=草を刈る場所 

鶉を立つ=鶉を飛び立たせる。ウズラは淋しい所にいるとされていた。 

ささら=割りたけで作った楽器。これから小さい音などをいう。

概説

万葉集に載る植物のカヤは、茅萱と、栢榧との両物があるが、本項では屋根などを葺く用材のカヤを検証する。

萱は、主に住居などから風雨を防ぐための建屋の屋根・壁・仕切・敷物に、ならびに人が着用する笠帽・蓑履物に用いられる植物の全般を総類するもので、対象となる植物は繊維質で乾燥して腐り難く、ある程度背丈のあるものが宜しく、具体的にはイネ科・カヤツリグサ科に所属する草である。(その他イグサ科・ガマ科・ユリ科に代替となるものがある。)

上記の万葉集の例歌にあるように「草」と書いてカヤと読ませている。萱・茅の字を以って表わし、漢語で茅ボウ・茆ボウを用いる。集01-0007,0011に、草を刈って仮庵を葺くとあり、美草・真草とは雄雄しくて背の高い草即ち萱のことである。それによって、カヤの語原は「刈って屋根を葺くもの=刈屋カリヤ」に由来すること明であり、現在の植物名オカルカヤ・メカルカヤ・カリヤスにその片鱗が残っている。ところが 萱 という字は元来、ユリ科のカンゾウ一名ワスレグサのことであるという。<和名抄><名義抄>にあるのは 萓であり、字形がよく似ているので後世この誤まった字を通用することになったのであろう。 

<大言海>

かや「①草、葺草、刈屋の義にて…苅りて屋を葺くものの意にあるか、屋作り屋をいう。②草の屋を葺く料とすべきものの総称、…萱また薄・茅・菅・芦・萩など皆是なり。茅・茅の名を専とす。薄の禾となれるが如し、草の名形状すべて蘆に似て高し、但し心の実るを異なりとす。茎葉を以って多く屋を葺く。花秋に咲く。亦葦の如くして穂に枝少なし

カヤの語源はいろいろと言われている。 (1) カリヤ=刈って屋根を葺く、 (2) 上屋をもつ葺料をカヤと呼んだ<箋註和名抄、日本古語大辞典> (3) カオヤ草祖の意味<言元梯> (4) カレ枯れ易いから<和句解> (5) 風によりカヤカヤと音がする<日本語源> などである。ところで屋根葺の初見は<古事記>・・・以鵜羽、造産殿、とあり、此の時生れ給うたのが、天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命アマツヒコヒコナギサタケウガヤフキアエズニミコトと大変長ったらしい名前の神 (神武天皇の父) で、ここで鵜の羽を葺草 (香草)カヤとしたと書いてあるから、屋根を葺く材をカヤとの心得は神話時代に既にあった証拠である。 

<古事記 上91>

葦草、云加夜


鹿屋野比売 顕宗即位前記 取葦草葉

<日本書記 神代上81

草祖草野姫

<延喜式>

祝詞 大殿祭 取り葺ける草カヤの噪さなく

植物でカヤを採用するとすれば、要は腐りにくければ宜しいので、川邊に生えるアシ、里山のハギも使い得る。建屋の規模が大きくなるにつれ、揃え易くて量的に入手し易いススキが最も普遍的で、事実五箇山の世界遺産合掌造りはススキを使っている。メガルカヤは茎が曲がっていて使いづらいし、チガヤは草丈が短い。則ち、ススキを以って葺いたのを萱葺というのであって、ススキの別名にカヤと呼ぶ所がある。田舎の農夫の民家に使う屋根材は概して稲藁であり、これを藁葺きといって区別している。ワラに比してススキは耐腐蝕性があり、野山に行けば株立って纏まって生育しており、比較的集荷し易い材料である。ヒノキやスギの樹皮は最高であるけれども、杮葺は高貴な館にのみ使われた。これらの植物で葺いた建物は静寂優雅であり、居住性は良いのであるが、数年ないし十数年で腐るので、葺き替えを行なわなければならない面倒と、火災に極めて弱体であるので、近年は特殊家屋を除いて全く見られなくなった。

里謡に、「伊勢は茅葺、春日は檜皮、八幡はちまん杮葺」と謡われるように、三社神託といわれる伊勢神宮・春日大明神・八幡大菩薩の神殿の葺材は伝統を守り決められているが、最近は入手しにくいものもあると聞いている。神社の古い伝統に、陰暦六月晦日の執り行う゛夏越の祓い“があって、茅で作った「かやわ」を潜り厄払いをするが、これはナーガ 龍神信仰によく似ている。

以上説明の如く、カヤとは、それら草を”刈る”動態であるから、特定の植物名を詮索するのは不適切かも知れないが、一応抽出してみると、次ぎのようである。なお、茅というのはチガヤを代表し、菅というのはカヤツリグサ科の乾燥茎葉である。南方ではヤシ類の葉っぱを簡単に葺いたニッパヤシという仮屋がある。ある種のカヤの根に黄色の色素を含有したものがあり、これで職布を染める(八丈島の名産キハチヂョウ)、また香りのよい物があり(レモングラス)ハーブとして、感冒の薬に応用される

イネ科

アシ

Phragmites connunis Trin.

ヨシ・キタヨシ

ダンチク

Arundo donax L.

ヨシタケ

ススキ  

Miscanthus sinensis Anderss

カヤ

オギ

Miscanthus sacchariflorus Benth et.Hook.F.


トキワススキ

Miscanthus floridulus Warb.

カンススキ

ハチジョウスシキ

Miscanthus condensatus


オガルガヤ

Cymbopogon tortilis Hitchc, var. goeringii Hand. Mazz.


メガルガヤ

Themeda japonica C.Tanaka


カリヤス

Miscanthus tinctrius Hack.


アブラススキ

Eccoilopus cotuctrius A.Camus


チガヤ

Imperate cylindrical Beauv. Koenigii Durand et.schinz.


マコモ

Zizania latifollia Trin.


オオムギ

Hordeum vulgare var. hexastichon Asners


ノガリヤス

Calamagrostis arundinacea Roth. var. brachytrichs Hack


イネ

Oryza sativo L.


エノコログサ 

Setaria viridis


カヤツリグサ科 

カンスゲ  

Carex morrowii Boott.


カンエンカヤツリ

Carex exaltatus Retz. var. iwasakii. Koyama


フトイ

Schoenoplectus tabernaemontant Palla


テキリスゲ

Carex kiotensis Franch et, Sav.


ハキリスゲ

Carex sendaica Franch. var. . nakiri T.Koyama


ガマ科

ガマ

Typhe latifolia L


<撮壌集 中 草>

カヤ、刈萱カルカヤ

<書言字考節用集 6 生植>

地筋カヤ、萱

<下学集 下 草木>

刈萱カルカヤ

<和名抄 6-24 >

萱 広益玉篇云「魚飢反 与宜同 加夜 武蔵国埼玉郡草原卿加也波良

すげ20-21>

加夜

<大和本草>

苅萱=霜草、茎・葉・節・穂、皆葦の如くして少なり。宿根より春苗を生ず。葉に青白の縦筋多く混じりて本末に通ず。四五月穂を出す。中華の書にいまだ見ず。葦・茅の類也。芒ススキ長短一種あり。短きをカヤといふ。

<和漢三才図会 92 山草>

黄茅 根名地筋 菅根 土筋

按黄茅其根組織面如糸瓜筋及卑薢髭、東之可以磨一レ物、呼名宇豆久利、出於芸洲広島、櫛挽家用之以琢櫛 苅萱 正字不祥 俗云加留加也

按、此草生山原、高三尺、細茎細葉、毎五葉両対生、八月抽出茎開景夫草及胡羅匐花

而粒々青色、既開則正黄、是亦可蒸栗、隋結


盡草カリヤス 多く越前より出す。以って染屋必用のものとす、按するに和の盡草、竹の葉に似ず芒ススキの類なり。江湖大浦の辺、山中最もよし。

<蘇頌図径>

が曰、盡草は、葉、竹に似て細く薄し、また円小也。荊襄の人,煮て黄色を染る。極めて鮮黄色なり、

<重修本草綱目啓蒙8 〉

白茅

集解弘景曰、詩云、露彼菅茅、この詩に詠ずるは菅と茅とニ物なり、弘景引きて一物とするものは誤りなり。時珍曰、菅茅はカヤなり、山中に生ず、ススキに似て大なり、根菅の字をスゲと訓ずるは非なり。カサスゲは苔なり、ミノスゲは蓑衣草なり、黄茅はアブラガヤ、アブラシバ、メガヤ、アイバソウ、カヤに似て葉狭くして厚く光あり、茎の末に花叢垂れて蜀黍の穂の如くにして黄褐色、亦穂に油の香あり、故にアブラカヤと云う、八月に花あり、即穀部の萌草なり、香茅は未詳、古へ三角スゲの説あれど穏やかならず。芭茅はススキ次に本条あり、荻はオギなり、茎中実す。花葉ともに芒に似て大なり。三背茅は香茅なり、屋敗茅は屋根に葺きたる葺茅萱なり、四角茅は屋上の四隅のちがやなり。

植物

スズキ Miscanthus sinensis Anderss. カヤ

S→Ad.5

オギ M. saccariflotus Benth. Et. Hook. オギヨシ

S→Ad.6

カリヤス Miscanthus tinctorius (steudel) Hack

東北から中部の山地の日当たりのよい場所に生えている多年草。茎は直立して叢生する。ススキより小型で、葉は広腺形~狭披針形で長さ2040cm,815mm。先端は次第に細く尖る。薄質、下部は疎な毛を付ける長い鞘となり茎を包む。花序は直立し分穂は310本程度で少い。中軸は短く、枝の長さは712cmで枝の軸の各節に2個ずつの小穂を着ける。長柄と短柄からなる。小穂は披針形、穎エイには芒ノギはなく、基部の毛は短く、穂は赤味を帯びた褐色。

補注:

1. 「刈りやすい」が語源

2. この茎・葉・根の煎汁で衣類を黄色に染める。伊吹山麓のものを近江刈安、八丈島の染めを黄八丈と、有名。

メガルガヤ Themeda japonica C.Tanaka

カルカヤ T. triandra subsp. Japonica T.Koyama

朝鮮半島から台湾まで分布し、日本では本州から琉球列島にいたるまでの、日辺りのよい山野に生える多年草。草丈1m前後の直立する茎と、長くて硬く狭い線型の葉が繁り、粗毛で覆われた鞘がある。葉は長さ3050cm,48mm. 葉舌は長さ13mm,縁は毛状となる。秋に上部の葉脈から長さ2040cm位のいくつかの疎な偽円錐花序が出る。穂は紅褐色になり、大きな鞘上の苞に包まれて、810mmの小穂は数個集って、その内4個は雄性で、中央のもの2個が雌性である。うち1個に長い芒がある。オガルガヤと異なる点は、葉の基部と葉鞘に長い白毛が生える。刈り易いので刈萱と名図けられ、秋の七草はこの種が正式であるという主張もある。

補注:

1. 葉舌は膜質で、長さ13mm,細かく裂ける。

2. 1本の小穂は4個の花からなる。真ん中の1個だけが雌花で,他は雄花である。

3. 苞頴の上部に疣状の突起があり、中央から粗毛が1本づつ生える。苞頴の内部から長さ6cmの長い剛毛が出る。

4. 葉舌は膜質で長さ13mm,細かく裂ける。

オガルガヤ Cymbopogon tortilis Hitchc. var. goeribii Hand.Mazz カルカヤ刈萱

本州・四国・九洲・台湾に分布、乾燥気味の日当たりのよい丘陵地に生える多年草。根茎は短く、髭根は強靭。草丈約1mでやや株立ち気味になる。葉は細長く長さ1540cmm,35mmの薄質、リボン状、で白味を帯びる。葉舌は三角形で先端が尖り、縁は不規則に裂ける。花序は茎の上方の船形の苞葉間から短い枝を出し、その先端に2個ずつ、その各節に長さ56mmの小穂が2個ずつ着く。小穂は1個が無柄で両性、芒がある。もう一個は有柄で雄性、芒はない。穂は緑白色である。茎や葉を裂くと微かにレモングラスのような香りがする。

補注:

1. この形がスズメの飛んでいるように見えるのでスズメノカルカヤともいう。

2. 下方の葉は長い葉鞘を作り、茎を包む。葉舌は三角形で毛がない。

3. 小穂は2個の花からなり、長い芒を付ける。花が終わると過失 

4. 髭根が出て、これを集めてカルカヤタワシを作る

イネ科Poaceae(禾本科Graminaceae)は種子植物のうちで、大きな群であり、全世界に約6009500種あると推定される。日本にはその内ca500種しかないが、それでも野山の何処へ行っても生えている雑草の多くはイネ科植物である。この科の重要なのは、食料であり、穀物として人類の保存のきく主食にされている。植物体は節を持つ中空の組織で、その細胞膜は硬化し、時には硅化組織を作ったりして、植物体は軽い割りに強靭で腐り難い。これをもって屋根葺用資材や葦簣ヨシズのような仕切り、呉挫ゴザ・蓆ムシロの敷物など、人類の住居に供されるところになった。飛騨白河卿、越中五箇山の合掌造りはその代表作であり、世界遺産に指定されている。

かや”萱・茅は「薄・菅・荻・葦・菰」の草束を屋根の横梁に架けて葺くことから、「カヤ」なる言葉が生れたとの説。これら草を刈ることから、刈萱カルカヤといういう文学語に転化した。室萱ムロカヤともいう。

<大言海> 萱茅=刈屋の義にて(鎌も刈刃なるべし)

[漢字] 刈萱、雀麦

[別名] ()カルカヤ=雄苅萱、雌苅萱

オカルカヤ=犬刈萱、雀刈萱、吾木香ワレモコウ

カリヤス=黄草、黄染草、近江刈安、山刈安、菅萱、黒灰

古文

<新撰六帖>

嵐吹く 周辺に茂る かるかやの上葉の露は まづみだれけり

衣笠内大臣

<枕草子 3>

草の花はかるがや

<枕草子 64 >

草の花は…女郎花、桔梗、朝顔、刈萱、菊、壷すみれ

<源平盛衰記 14c 18>

文覚清水状天神金事「木につく虫は木を齧り、萱に付く虫は萱を啄といふ事あり。

<浮世草氏> 傾城白三味線(1701) 3

表向きは萱軒カヤガノキにして、中戸より中のきれいさ

<浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)>5

下郎ながら彼めが人相たくましい生れつき、萱にも心おく時節

<御傘>

萱葺=萱が軒端、植物にあらず。秋にもなるまじき道理ながらかやうの名草は、秋の季大切なる故に用いるがよきと也

<八丈実記(184355)>

土産「芒カヤすすき地筋チジョ

<師兼千首(1380)>

雑 岩代やかやかしたねのかり枕松風寒み妹夢にみゆ

<宴曲集 (1296)>

鵜の居る岩の摂ハザマにも葎ムグラの宿萱軒にして、中戸より中のきれいさけっこうさ

<新古今和歌集((18-1696)>

刈萱の関守にのみ 見えつるは人もゆるさぬ道べなりけり

<(4-3459)>

うらがるる 浅茅が原のかるかやの乱れて物を思ふころかな

<千載集 秋上 255>

夕されば かたがししげみになき交わす虫のねをさへ分けつつぞゆく 

藤原盛方

<金槐和歌集214>

夕去れば野路の苅萱うちなびき 乱れてのみぞ 露もおきける

<古今和歌集 15 >

まめなれど なにぞはよけくかるからの乱れてあれどあしけくもなし

<散木卉謌集 10 >

我駒はしばしとかるかやましろのこはだの里に有とこたえよ

<金葉(112427) 3>

萱が軒端秋也。秋にならずと云一説あれども秋たるべし、

<夫木集 >

かち人のゆききの岡の かるかやは折ふす方や道となるらん

<太平記 28 >

三角入道謀反事 城の跡なる自深山、匐々忍寄りて、薄刈萱篠なんどを切りて、鐙のさね、頭兜の鉢付の板にひとしと差て、探竿影草に身をかくし、鼓が崎の切岸の下、岩尾の陰にぞ臥たりける。

<徒然草(139)>

秋の草は、萩・薄・桔梗・萩・女郎花・藤袴・紫苑・吾木香・刈萱・竜胆・菊。黄菊も.

(236)>

丹波にかやしだのなにがしとかや、しる所なれど…

<雨月物語(1776)>

吉備津の釜 をぐらき林の裏にちいさき草屋カヤノヤあり

<冠辞続釈 3 >

かるかやのみだれ、古今集、まめなれど 何ぞはよくくかるからの 乱れてあれどあしけくもなし 実法めきたる人も必よき事のみにはあらず、我おこなひの乱りざまなるも、はたあしきむくひのきたるのみいあらず、我おこなひの乱ざまなる物也、今は一種の草の名にて茅の類の長だち二尺ばかりに秋は葉も共にもみぢする物なり、古歌によみしは是にあらず、なべての草おひたけ立てるを刈りて、仮初の庵に取ふく名、神代記に、野の神を茅野姫と申すも、草といはぬは家にとりふく用を専らたとむなり、

<謡曲本 芭蕉> 

風茫々ともの凄き古寺の庭の浅茅生 刈萱、面影うつろふ露の間

遊行師>

人跡絶えて 荒れ果つる蓬葎刈萱、面かげうつろふ露の間

<俳句〉

落栗に 萱ふきかゆる 嵐かな

透雲


夕月夜 岡乃菅根の 御廟守る

芭蕉


秋雨や 我萱蓑は まだ濡らさじ

蕪村


一番に 乙鳥つばめのくぐる 茅の輪かな

一茶


茅の穂の 稚き月を 眉の上

加藤楸朗


われをふき萱過ぎる風の うしろみゆ

森 澄雄

イネ科の花穂・小穂について   

イネ科の植物は、生長し適期になると、葉間から花蕾をつけた花穂を出す。これを「穂」,その一片だけを「総フサ」といい、花軸をなす。この総には、単独また総苞に包まれた数個の花が集って「小穂」をなして着く。この着き方は「花蕾」の構造とともに、イネ科の分類に多いに参考になるものである。

題材としてススキが最も普遍的であるので、模擬図で説明すると、総軸が分岐して小穂をつくのであるが、よくみると総の分岐に直接ついている小穂(短柄小穂)3mm位の柄の先についている小穂(長柄小穂)の2種と、他に小穂の脱欠した柄だけのものがあることが観察できる。そして長柄小穂と短柄小穂とがペアになり左右交互になっている。即ち2個ずつの原則がイネ科の植物によっては合わないものがある。


ススキ

オギ

そもそも、単子葉植物の基数は 3 であるべきところ、イネ科植物はその1を省略して2数を採る事が普通である。例えばカヤツリグサ科では茎軸に葉が3枚を基数にして着くが、イネ科では2枚である。小穂も元来3個であったものが、進化の過程で複雑になった。その証拠にカラスムギでは3個であるけれども、ススキ属では2個が残った形である。長柄がなく短柄若し無柄で、1個になったものがチカラシバ、複数個が集って着いたものがメガルガヤ、小穂の1個づつが総に単列についたものがスズメノヒエ,副列に左右についたものがエゾムギ種々万別である。

それに、子実を包む各2枚づつの、外穎 内穎があり、それに直生する禾()と、着生部に生える毛が変化を与えることになっている。

イネ科植物の花穂と小穂の例示

ジュズダマ

クリノイガ

エノコログサ

ツクシガヤ

イヌシバ

エゾムギ

ヒエガエリ

カラスムギ

アブラススキ

スズメノテッポウ

カニツリグサ

ウンヌケ

<

スズメノヒエ

コブナクサ

コバンソウ

カモガヤ

ミチシバ

カゼクサ