Ad-05.
すすき
為酢木・須酒伎・須珠吉;{をばな
乎花・草花}
薄
ススキ・{旗須ヾ木 ハタススキ}・{尾花 ヲバナ}
漢語;芒ボウ
[万葉集記事]
すすき |
03-0307 |
07-1121 |
10-2221 |
10-2277 |
||||
|
10-2285 |
15-3681 |
17-4016 |
|
||||
はたすすき |
01-0045 |
08-1637 |
10-2089 |
10-2283 |
||||
|
10-2311 |
14-3506 |
14-3565 |
16-3800 |
||||
|
17-3957 |
|
|
|
||||
はなすすき |
08-1602 |
|
|
|
以上17首 |
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をばな |
08-1533 |
08-1538 |
08-1564 |
08-1564 |
08-1572 |
08-1577 |
08-1637 |
09-1757 |
|
10-2110 |
10-2167 |
10-2172 |
10-2242 |
10-2270 |
10-2277 |
10-2292 |
15-3691 |
|
16-3819 |
20-4295 |
20-4308 |
|
|
|
|
以上19首 |
(一) |
雑歌 |
|
皮為酢寸 |
|
はだすすき |
注釈:
博通法師=伝不詳.
美穂=和歌山県日高郡美浜町
はだ薄=久米の枕詞、懸り方不明
(二)03-0307 |
秋雑歌 |
|
目頬布 君之家有 |
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水めずらしく |
注釈
石川朝臣広成=天平宝宇2年従五位
花すすき=穂のでたススキ
(三)10-2089 |
秋の雑歌 |
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乾坤之… |
|
天地あめつちの…艫ともにも舳へにも |
注釈
旗薄=穂が旗にように出揃ったススキ。
真楫繁貫き=左右そろった櫓を沢山揃えて。
白波しのぎ=白い波を乗り越えて、
(四)15-3681 |
秦田麻呂肥前国松浦郡狛嶋亭に船吐せし夜、遙かに海の波を望みて、各旅の心を慟みて作れる歌 |
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可敞里伎弖 |
|
帰り来て見むと |
注釈
松浦郡=佐賀県と長崎県北岸のあたり。
狛島=唐津市の神楽島?
秦田麻呂=伝不詳
(五)17-4016 |
高市連黒人の歌一首 |
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売比野能 |
|
婦負の野の |
注釈
婦負=富山県呉西に広がる平野。
三国真人五百国=伝不詳
(六)20-4308 |
七夕の歌八首のうち |
|
波都乎婆奈 |
|
初尾花ハツヲバナ |
注釈
初尾花=次の花を導く枕詞
花に見る=花妻としてみる
[概説]
薄ススキは、日あたりのよい原野に、普通見られるイネ科の植物で、知らない人は居ないに程である。
秋の始めに花穂を出し、之を尾花と称して、十五夜の晩に月見団子と共に飾った。別に、荻オギという植物があり、これは明らかにススキと違うのであるが、同じような花穂を出すのでこれもススキに含めることもある。そして、ススキの葉茎は屋根葺材に用い、その時は萱カヤと言い、これまた古文に多く出てくる。
<古事記 |
山所の一本須岐項傾し汝が泣かまさく時雨の霧に立たむぞ |
<古事記 |
そのたてる足は、荻ススキの如く、指挙たる角は枯松の如し、 |
<日本書記 |
九年三月任申朔、皇后選ニ吉日一人ニ斎宮一、親為二神主、…亦間之、徐是神ニ有レ神乎、答曰、幡荻ハタススキ穂出吾也、於ニ尾田吾田節之淡郡一所レ居之有也 |
<日本書記 |
宮垣崩るれども造らず、茅茨壊るれども葺かず。 |
<摂津風土記逸文(雄伴郡)> |
有ニ夢野 |
花穂を尾花というのは、獣の尾に似ているからで、薄花・芒花・袖波草とも云う。ススキという名の植物はススキ属に包含する数種のものの他に、アブラススキというのもあるし、ヨシの仲間で立派な雄花をつけるものがあり、観賞の対象である。反対に、カリヤスの類の穂は貧弱である。尾花とはススキの花穂であるから、集では”はなすすき”或いは旗に見立てて“はたすすき”と云っている。”しのすすき”とは、なよやかな細い薄の穂を細竹に見立てたのである。風媒花であるから、目立つ花弁はないし香りもなく、華麗さは全く認められないのであるが、これを愛でるのは日本人の独特の感受性であろうか、秋の七草の一である。
尾花色:
靭、おばな栗毛、
おばなの粥:
宮中でススキの花穂を黒焼きにして白粥に混ぜた。八朔の祝に食す、疫病を除く呪い。江戸時代に民間に広がったが、黒ゴマを替わりに使った。
おばな細工:
ススキの枯穂を組んでミミズク、フクロウなど作る。
<松の落葉> |
すすきとはあつまり生じ、繁りたる草をいひし事にて、和名抄にも草衆生曰レ薄といヘリ又日本書記神功皇后の巻に幡荻ハタススキ穂出吾也、孝徳天皇の巻に三河大伴直蘆とありて、荻蘆のもじをともにすすきとよめるも、集り生るゆえにこそ、さて乎花はものにより、ことにあつまり生しげれば、中むかしよりは自からにこの草の亦の名の如くなれるなるべし。 |
<東雅 |
薄ススキ 藻塩草にススといひ、ササといふ、其語の転せしにて義は同じ、例えば雀をスズメといひ、鶵鵪をササキといふ、其にこれ其小鳥なるをいふが如し 万葉集抄にミクサとはススキなり、真草の義にてミクサといふべし、此集義読の中、草花とかきてヲバナと読む、是ススキは真の草なるなり、万木千草多かりといへども、神紙を祝ひかざり祭るに、榊をミサカキといひ、ススキをミサカキといふべし、天照大神天岩戸にこもり給ひし時、野槌者採二五百箇所野薦八十五籤一と云。此れによりて信濃諏訪明神もみさやまのかりやに、花ススキを採りてミスサを奉るといふ是也と見えけり、日本紀には野薦の字スゞとよむを、纂疎に薦は小竹之名と註せられたり、万葉集抄の説によればススはススキ也、纂疎の説によればスズといふは猶小竹よむてササといふが如し、いづれか是なる事知らず。 |
<大和本草 |
芒カヤ・ススキ |
<和漢三才図会 |
芒 按忘*(俗用薄)其花作レ穂而翻々似ニ物之尾一、故俗呼名ニ尾花一、順和名抄引ニ爾雅一云、草聚生曰薄、此草似ニ数茎簇生一、竟以レ薄為二此草名一、 鬼忘*オニススキ一名 糸薓 鷹羽芒 一寸穂芒 |
<箋註和名抄 |
薄按古ニ草叢生者一、為二須須伎一,非一草之名 |
<重修本草綱目啓蒙 |
ススキ、ミダレグサ、ソデナミクサ、ツユソグサ、ツキナミグサ、ミクサ、テキリガヤ |
ススキに関する古典の解説は非常に多くあり、これによればススキという言葉は本邦で生まれたのであり、古くは萩・葦なども含めての総称であった。新井白石師の解説では少し、シツコクて却って判り難い所もあるが、広く扱っている。
ススキから誘導された名称に、(1)
紋所の形の名 (2)
襲カナメの色目で、表は蘇芳、裏が青色、
(3) 遊里で芸娼妓の揚がりなど。
ススキを日本漢字で 薄
と書くが、この本来の意味は (叢クサムラ・あれくさ)
であり、中華語では 芒
である。語源は<大言海>すくすく生い繁るさま、<和名抄<爾雅>草の集り生ずること
と説明している。昔は芒・荻を区別していなかったようで、古事記や日本書紀では荻をススキと訓ませている。秋に出る花穂を尾花といって、和歌・絵画・美術品など日本的な題材に取り入れられている。
<古語大辞典> |
①イネ科の多年草 |
<大言海> |
すすき:ススはすくすくと生ひ立つ意 |
ススキは、家屋の屋根葺き、壁の下台、簾スダレや葦簾ヨシズ、など住居に関連する材料に、また炊飯の燃料などに、昔時の生活に密着していた。現代はあまり見られなくなったが、でも海水浴場の氷と書いた暖簾の掘っ立て小屋などにいくらかは懐かしく残っている。十五夜の名月には縁側に、キキョウとススキを活け、それに団子を添えて月見を興じた。また、盆の大文字焼は山の斜面のススキを焼いて今では観光対象となっているが、昔時は京の都ではカヤの需用が多かったので、,野火で焼くと他の雑草は焼け失うが、ススキの地下茎は火に強く残るので、良いカヤを採るために火を付けるのである。ススキは有機物が不足でpH4
以下の酸性痩欠土壌の方が生育に合っている。
ススキには鋭いガラス質の鋸歯が葉縁に付いているので、この葉を裸手で扱くと切れて痛い目に合う。一般にイネ科の植物は土中のSiO2を吸収して、植物体が倒伏しないように強化する作用をしている。土壌の珪酸質が溶けるというと、奇妙に感ずるかもしれないが、毛根から分泌されるクエン酸によって可溶となり、これによって植物は吸収する。然し、構成する珪酸鉱物によって可溶率は大幅に差違がある。蛍光X腺回折によって鉱物が解明されるが、ここでピークの現われない無晶質のガラス質のSiO2が可溶性と言える。
植物
① ススキ Miscanthus
sinensis Anderss, Saccharum japonicum Thunb., M. purpurascens
Andrew., M. corresis Hack, M. hidakanus Honnda
南千島~琉球の日本全土・朝鮮・中華国の広範囲に亘り分布。日当たりのよい平地・山地に普通に生える。栄養分の少ない乾燥ぎみの開拓地などに、飛来した種で最初に生えるのが本種であり、初めは弱々しく一本立ちしているが次第に株を造り、集落は全地面を覆うようになる。粗剛な多年草で、草丈1~2mに達する。葉は線形で裏面が少し白がかって、葉縁はざらつき細かい刺歯があって、触ると痛い。短い茎の両側に対生に10葉前後の組みとなって伸びるが、8月後半頃に中心部からニ三枚の腺形の択葉をつけた茎を伸ばし頂部が割れて、そこから花穂を出す。花序は長さ20~30cm,多数の細長い総苞を10本位、一方に傾いた散房花序を作る、小穂は2個づつ付き、両性、長さ5~8mm披針形で、汚黄色を帯び先が尖る。基毛は長さ8~12mm白色まれに紫色・淡紅色を帯びる。第4穎エイに芒がある。変形種例えば小型のもの、斑入り葉、細い葉などがあり、園芸に栽培される。
補説
1.
花穂の各軸の節毎に2個からなる小穂をつける。1個には柄がなく、もう1個には短い柄が着く。小穂に芒がある。(オギとの違い)
2.
メシベは穀褐色、葯は黄色。
3.
小穂の基部に1cm内外の白い毛がある。開花の初めは立っているが、後に広がって相撲取りのサガリのようになる。
4.
葉の中脈は盛り上がって、葉の基部は葉鞘になる。
5.
地下茎は伸びず、先端が上向きになって芽になる。(オギとの違い)これを仮軸分枝という。主軸の先端の生長が止まって則枝が出る。地下茎が這い、それから幾つもの芽がでるのを単軸分枝という。
近縁種
シマススキ |
var. |
タカノハススキ |
forma |
イトススキ |
forma |
ムラサキススキ |
forma |
エゾススキ |
forma |
② トキワススキ Miscanthus
floridulus Warb カンススキ、アリハラススキ.
本州では関東以南・沖縄・台湾・太平洋諸島など、暖地の草地を好み、形状はススキに似るが、大型で草丈2mに達する。花穂は7月に出穂し、立派で40cmもあり、花穂中軸が長く小穂は短く密につける。冬季でも緑を保つので常盤薄と、また姿が立派に整っているので業平薄という。
補説
1.
2年がかりで生長する。
2.
昔はこの茎葉でものを縛るに丈夫であったので、田の畦や堤防などに植えてあった。
3.
ススキと同じく、小穂は2個の花からなり、1個は長い柄が、1個には短い柄が着く。
③ ハチジョウススキ Miscanthus
condensatus Hack.
暖地の海辺に生え、ススキに似てより大型で、葉は2~3cmと幅広くざらつきは少ない。冬でも緑は残っている。花序の中軸は短いが多数の穂を着ける。日本では太平洋側の暖かい海辺、台湾、中国、太平洋諸島に分布する。
④ カリヤス Miscanthus
tinctoris Hack .
本州中部の山地の日当たりのよい場所に生育する多年草。ススキよりやや小型で、茎は直立し群生する。葉は薄質。長さ20~40cm、巾8~15mm先端は次第に尖り、下部は鞘となり茎を包む。花は8~9月。花序は直立し、掌状に3~10本の分枝を出す。小穂の葍に芒はなく、基部の毛も薄い。古来黄色染料に応用があり、とくに伊吹山麓のものを良質とした。
名前
薄・芒・須須伎・須須吉・須為寸・須珠寸・須酒伎・為為木
「方言名」
イチモンガヤ・オトコカヤ・オバナ・カヤ・ジュウゴヤグサ・ススツカヤ・テキリグサ・トバシグサ・フキグサ・ミミツンボ・ヤネカヤ・
「語源」
(1)
すくすく生ひ立つ、キは草本の意味
<大言海>
(2)
進む草の意
<言元梯>
(3)
神楽に用いる鳴物用の鈴の木
(4)
ススキのススはササにも通じ、細かい事、キは切先の如く人を傷つけるから
<東雅>
(5)
スは細い意でそれが叢生することから二重とし、キは草をいう
<和名抄>
(6)
煤生の訓
キはキザスの略か <関秘録>
(7)
スクスククキ直直茎の義
<名語紀・日本語原学>
(8)
葉に赤く血のついたような部分があることから血ツキの意
<滑稽雑談>
(9)
秋のスズシイ時に花穂をつけること
<日本釈名>
(10)
サヤサヤキ清々生の義か
<名言通>
(11)
韓国語SHUSHU,
中国語SHUZ-SHUZ
(秫々)と擬似するところがある・
(12)
思草(ナンバンキセル)を本種に比定する説
「別名」
尾花、茅カヤ,萱、男榧、屋萱、衵アコメの花、袖振草、乱草、頻波草、袖波草、月波草、露見草、露曾草、荒草、旗薄、花薄、かやんば
「漢語」
芒・地筋・芭芒・芒
「英語」
Pampas
grass
古文
<古今和歌集 |
今よりは |
平貞文 |
243> |
秋の野の草のたもとか |
在原峯梁 |
318> |
今日よりは |
よみ人しらず |
653> |
花薄ほにいでて恋ひば |
小野春風 |
853> |
君がうゑしひとむらすすき |
三春の有輔 |
<枕草子 |
ここに薄を入れぬ、秋の野のおしなべたるをかしさは |
|
<源氏物語 |
小さき木どもなりしも、いと繁き陰となり、ひとむら薄も、心にまかせて乱れたる |
|
柏木> |
心にまかせて繁りあひ、ひともとこそ薄も、たのもしげに広ごりて、虫の音添はん |
|
宿木> |
穂に出でぬ物思ふらし |
|
<土佐日記> |
はるののにてぞねをばなく |
|
<金槐和歌集 |
われのみや |
|
<源平盛衰記38> |
三年が程書き尽きぬみずくきの数積もれども、ついに返事なく |
|
<梁塵秘抄 |
風に靡くもの、松の梢の高き枝、竹の梢とか、海に帆掛けて走る船、空には浮雲、野辺には花薄 |
|
<大和物語 |
故式部卿の宮のいではのごに、まヽちヽの小将すみけるを、葉なれて後、女すすきにふみをつけてやりたりけせば、小将、 秋風に靡くをばなは 秋ともしのばざらまし |
|
<山家集> |
糸すすき |
|
|
吉野山 |
|
56> |
すすきしげる |
西行 |
<袖中抄 |
すぐろのすすき |
|
|
あわず野の |
|
|
ほやのすすき |
|
|
しなのなるほやのすすきも風ふけばそよそよさこそいはまほしけれ |
|
<新古今和歌集 |
をぐら山 |
女御徴子女王 |
350 |
野辺ごとに |
左衛門督通光 |
462 |
わが宿に |
大伴家持 |
6-618 |
霜さゆる |
曽根好忠 |
8-793 |
朽ちもせぬその名ばかりを |
大僧正慈円 |
13-1215> |
結び置きし |
源 |
16-1570> |
花薄 |
後徳大寺左大臣 |
<夫木和歌抄 |
咲きそむる |
後九条内大臣 |
すすき |
うちしめり |
藤原定家 |
|
都より |
定家 |
|
花すすき |
源 |
|
穂に出でて招く薄の |
藤原為家 |
|
露結ぶ |
藤原俊成 |
|
あわつのの |
関白家丹後 |
<徒然草 |
この薄をいぶしく思ひけるやうに、一大事の因縁をぞ |
|
238 |
秋の野の |
|
<蜻蛉日記 |
穂に出で |
|
26> |
あらしのみ |
|
38> |
ほに出でば |
|
296> |
花すすき |
|
<斎宮女御集 |
ほのかにも |
|
<渡辺幸庵対話> |
上総の内に山の根と云処あり、是諸星庄兵衛といふ人の御代官所也、是に池有り、池の堤より水中へ六尺計ありて、一本薄とて二十七本生ず、小さきは一尺余、大は一尺四寸も可レ有レ之歟、根本三尺余も蘇鉄ソテツの如く、夫より末に薄一本には恒の薄の如く数百本生ず、穂にでることも野にあると同じ也。往古より人さわる事ならず。 |
|
<剪花翁花 |
薄 |
|
<浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)> |
むむ。なるほど薄の穂にもおじるとや |
|
お染久松(1789)> |
前方大阪行きの土産に貰やった薄の簪。 |
|
<八雲御抄 |
薄 |
|
<催馬楽> |
逢路(篠レ小須須岐) |
|
<謡曲本 |
垣の薄吹く風の |
|
定家> |
心は秋の花すすき |
|
紅葉狩> |
やたけ心の梓弓いる野の薄露分けて |
|
< |
道を願たの糸はへて織るや錦のはた薄 |
|
<虎明本狂言・腥物> |
落人はすすきづると申すが… |
|
<類名本赤染衛門集> |
撫子の薄になりたるを見て、生ひかわるやなでしこの花すすき招けば人の |
|
<長明四季物語> |
放免の下人の袖袂につけたる百姓瓢のすすきに成りたるなれど |
|
<雅俗随筆> |
笠亭仙果「今に、尾花を専らすすきと云えど古くは群る草をすべてすすきと称ひ、爾雅釈草に草簇生曰レ薄と云うの従ひ薄のじをすすきと訓すなり |
|
<神功称制前記> |
幡荻ハタススキ,穂出吾也。 |
|
<雀の卵> |
風に出でてながめながめて |
北原白秋 |
<朱葉集> |
いと高く |
与謝野昌子 |
<無名秘抄 |
雨の降る日、ある人のもとに、おもふちさし集りて、古き事など語り出たるついでに、ますのすすきといふは、如何なる薄ぞ等云ひしろふ程に、ある老人の曰く、わたのべといふ所にこそ、この事知りたる聖一人あると聞き候しかども、いまだ尋ね聞かずといひ出たり、登蓮法師その中にありてこのことをきゝ,詞すくなになりて又問ふこともなく、主にいふ様、みのかさちとかし給へと言ひければ、怪しきと思いながらとり出でたり、物語りどもきゝさして、蓑うちき藁沓さし履て、いそぎ出けるを、人々あやしがりて、そのいわれを問ふ、わたのべといふ所へ罷るなり、年比いぶかしく思ひ給へしことを、しれる人あの人と聞て、いかでか尋ねにまからむといふ、驚きながら、さるにても雨やめて出たまえと諌めけれど、いでやはかなき事をのたまふかな、命は吾も人も雨の晴れなど待つべきものか、何事も今しづかにとばかり言ひすてていにけり、いみじかりけるすき物かな、さてほいの如く此の所へゆき、尋ねあはせて、とひききて、いみじう秘蔵しけり、このこと第三代の弟子に伝へならひ侍ける、此の薄のこと同じさまにてあまた侍也、ますほの薄、まそをの薄、ますうの薄とて三品あり、ますほのすすきというは、穂の長くて一尺許あるを云ふ、かのますかゞみをば、万葉集には十寸鏡と懸けるにて心うべし、まそすすきといふは、真麻の心也、俊頼朝臣よみ侍る、まそをの糸をくりかけて侍るとよ、糸など乱れたる様子なり、ますうのすすきとは、真にすはうといふ心なり、ますなうのすすきといふべきを、詞を略していふなり、色ふかき薄の名なるべし、是故集などにたしかに見えたる詞なれど、和歌の習ひ、かやうの古事を用いるもまた世の常の事也。人あまねくしらず、みだりに是をとくべからず。 |
<俳諧> |
松風の |
蓼太 |
|
芒散りて |
暁台 |
|
秋風に |
毛吹草 |
|
物言えば |
芒の穂 |
|
朝帰 |
柳多留 |
|
古株の |
子規 |
|
何事も |
芭蕉 |
|
いなづまや |
芭蕉 |
|
ともかくも |
芭蕉 |
|
暁の |
蕪村 |
|
狐火の |
蕪村 |
|
山は暮れて |
蕪村 |
|
追風に |
蕪村 |
|
秋ふたつ |
蕪村 |
|
枯芒 |
一茶 |
|
散る芒 |
一茶 |
|
此上に |
一茶 |
|
をりとりて |
蛇杓 |
|
なにもかも |
中村草田男 |
|
きりぎりす |
水木真貫 |
おばな |
<定家三百首> |
秋の野に尾花の波を |
|
|
<新拾遺 |
まのの浦や入海寒み |
実朝 |
|
<後記17 |
いかに吹く風にあれば |
|
|
<後選集 |
誰聞けと |
|
|
<源氏物語 |
かれがれなる前裁の中におばなのものよりことにて、手でいて招くがおかしく |
|
|
<浄瑠璃 |
風のさそわれゆく道の |
尾花やすし |
|
<俳諧> |
をいをいをいたけた |
|
|
尾花散りや |
暁台 |
|
|
穂に出ぬ間 |
頼実 |
|
尾花散り跡は袖なし |
政孝 |
[用途]
草全体
まぐさ。
草茎
乾燥したものを、薄茅と称し、編んで日よけ
風除け・屋根葺
根茎
煎汁を風邪、頭痛に民間薬
花穂
観賞