Ad-15. すげ





123




Ad-15.
すげ:須毛・須宜

スゲ
菅                       

カヤツリグサ・カンスゲ・カサスゲ・シラスゲ 

漢名:
菅・薹・莎・椶・莞・

[万葉集記事] 

スゲ

04-0619*
難波の

11-2456
山草

11-2771
小菅

11-2772
小菅

11-2818
菅笠

12-2862
山草

12-3087
真菅

18-4116*
奈呉江の

スガ

03-0299
菅の葉

03-0414
菅の根

04-0580
菅の根

04-0679
菅の根

04-0791
菅の根

06-0948*
菅の根

07-1250
菅の根

07-1277
姫菅原

07-1341
菅原

07-1344
菅の根

07-1373
菅の根

08-1655
菅の葉

10-1921
菅の根

10-1934
菅の根

11-2473
菅の根

11-2758
菅の根

11-2819
菅笠

12-2857
菅の根

12-3052
菅の根

12-3054
菅の根

13-3284*
菅の根

13-3291*
菅の根

14-3369
菅枕

16-3875*
菅笠

20-4454
菅の根

スガモ

07-1136
菅藻

イワモトスゲ

11-2472
石穂菅

02-0397
岩本菅

11-2761
岩本菅

コスゲ

11-2470
小菅

11-2471
小菅

13-3323*
小管

14-3445
玉小管

14-3498
小管

14-3498
小管

14-3564
小管

シヅスゲ

07-1284
静菅

シラスゲ

03-0280
白菅

03-0281
白菅

07-1354
白菅

11-2768
白菅

ナナフスゲ

03-0420*
七節菅

ミクマスゲ

11-2837
水隈菅

ミシマスゲ

11-2836
三島笠

アリマスゲ

11-2757
有馬菅

12-3064
有馬菅

ヤマスゲ

04-0564
山菅

11-2474
山菅

11-2477
山菅

12-3051
山菅

12-3053
山菅

12-3055
山菅

12-3066
山菅

12-3204
山菅

12-3577
山菅

20-4484
山菅

(スガドリ)

12-3092
菅鳥

*
は長歌

()
03-0280

高市連黒人謌

去来児等
倭部早 白菅乃 真野之榛原 手折而 将帰

白いざ児とも
大和へ早く 白菅の真野の榛原 手折りて行かむ

注釈

黒人=持統・文部時代の歌人、伝不詳。 

真野=神戸市長田区東尻池町。 

榛原=ハリが生えている原っぱ。ハリはハンノキかハギか、両説ある。

()
04-0619

大伴坂上郎女怨恨歌

押照
難波乃菅之 根毛許呂尓 君之聞四手 年深……

押し照る
難波の菅の ねもころに 君が聞こして 齢ふかく……

注釈

押し照る=難波にかかる枕詞。

難波の菅の=難波は菅の産地、 

根もころに=植物の細かい根が土と一緒に凝り固まっている状態。菅の根が土に絡んでかたまっているところから、ねもころの序となる。

()
07-1341

草に寄せる

真珠付
越能菅原 吾不苅 人之刈巻 惜菅原

真珠つく
越オチの菅原 吾刈らず 人の刈らまく 惜しき菅原

注釈

真珠つく=玉をつける緒の意からヲチにかかる枕詞

越=不詳、遠いところという意味。 

惜し≠持っているものをてばなしくたい感情。

()
08-1655

冬相聞
三国真人人足謌

高山之
菅葉之努芸 零雪之 消跡可白毛 恋乃繁鶏鳩

高山の
菅の葉凌ぎ降る雪の 消ぬと言ふべくも 恋の繁けく

注釈

凌ぐ=押し伏せて

消ぬと言ふべくも=消えてしもうといふべくも

()
11-3369

相聞
相模国の歌

阿之我利乃
麻万能古須気乃 須我麻久良 安是加麻可左武
許呂勢多麻久良

足柄の崖ママ
小菅の菅枕 何故アゼカか巻かさむ 児ろせ手枕

注釈

ママ=押し伏せて

消ぬと言ふべくも=消えてしも

()
12-3087

真菅吉
宗我乃河原尓 鳴千鳥 間無吾背子 吾戀者

真菅ますげよし
宗我そがの河原に鳴く千鳥間なしわが背子せこわが恋らくは

注釈

真菅よし=すがに懸かる枕詞

宗我の河原=奈良県高市の曽我川の下流の河原

()18-4116

国の據久米朝臣広縄、天平勝宝元年閏五月二十七日本任に還り至りき、よりて長官の館に詩酒の宴を設けて楽し飲む、時に主人守大伴宿禰家持の作れる歌

伊夜末尓乃末
多豆我奈久 奈呉江能須気能 根毛己呂尓…

いや増しにのみ
鶴が鳴く 奈呉江の菅の ねもころに…

注釈

奈呉江=富山県射水市堀岡の辺り、 

まかりて=貴人の下から退出する。

[概説]

菅(スゲorスガ)に関し、集には長歌・短歌併せて、なんと64首にも引用されている。現代の植物学で言うとカヤツリグサ科Cyperaceaeの就中スゲ属Carexに類する腺形の葉の植物であるが、万葉集に出てくる菅は、果たしてどの種に該適すべきか不明である。マスゲ・ハマスゲ・シズスゲ・コスゲ・イワモトスゲなどは歌調を整えるために附名させられたもので、学名にはそう云った植物はない。イワモトスゲ・ミクマスゲ・ミシマスゲ・アリマスゲ等はその生育している地の名前であろう。{ハマスゲ・コウボウムギは別項に上載}当該するものにシラスゲの名があるが、それは真榛原に生える歌題に合わせたので、学名のものとは違う。ましてやヤマスゲの歌を熟読すると、それは麦門冬(ユリ科のヤブランLiriope
platyphylla Wang & Tang
またはジャノヒゲOphiopogon
japonicus
Ker-Gawl.)
であってスゲの類でないとも言える。スゲは、実用的に蓑・笠・敷物に用いられるのであるが、同目的にはワラやカヤやイグサなどイネ科・イ科・ミクリ科に属するものも種々ある如く、今でも東南アジアの一部での雨具は、葉巾の広いのを笠に、比較的に狭いのを蓑にする様に、目的によって使分けがされる。スゲの類は軽いこと、光沢があるので笠や装飾品に用途がある。

菅は日本に古くから存在した証拠に、古文にその名が載っている。

<古事記
中 神武
>

芦原のしこけき小屋に須賀たたみ、いやさや敷きて

<古事記
仁徳天皇八田若郎女
>

天皇恋八田若郎女、賜遺御歌、八田の一本菅は
子もたず 立か荒れなむ あたら菅原 言をこさ
菅原といわめ あたら清い女

<神楽歌>

中臣の天の古須気を割きはらい

<出雲風土記>

すべてもろもろの山にある草本は、…麦門冬ヤマスゲ…

<播磨風土記
宍禾郡
>

敷草村、此村有山南方去十里許、有沢生菅作笠最良

<延喜式
17>

御輿一具
蓋料菅一囲、
野宮装束
御輿中子菅蓋一具 

日本に生育する菅には大小各種があるけれども,その小型を美称して“こすげ”(14-2489,
11-3471,
11-3470)
としているのであり、さらに玉小管(14-3445)と重修飾して、或いは”ますげ”〈12-3087〉と言ったものもある。

古代にいう「すげ」にはコスゲ・カサスゲ・イトスゲなどカヤツリグサ科のスゲは勿論、キスゲ(ゆり科)コウボウ(イネ科)フトイ(イグサ科)等葉の細長い植物を含めている場合がある。集にヤマスゲを題とする歌が11首あるが、これは単に山に生える菅と解釈せずにユリ科のヤブランまたジャノヒゲ(麦門冬)であると唱える説がある。確かに枕草子など古典で<卯杖の様に頭などに包みて、山橘、日陰、山菅などうつくしげに飾りて>の場合は、麦門冬であろうが、集の山菅はカヤツリグサの類と読んだ方が妥当とみる。笠蓑に使うのは、スゲはカサスゲCarex
pumila Thumb.
又はヤワラスゲC.
transversa

Boot

が最も普通であるが、集で美化表現であるとみられる白菅は(03-0280,03-0281,07-1354,11-2768)はシラスゲC.
donina
Spreng.
というのは現にあり、また菅を乾燥して蓑笠の材料としたときカヤに比べて白味を帯びるので左様にいう例がある。産地の名前をつける例で”有馬菅(12-3064)”三島菅(11-2836)”難波菅(11-2819)”は夫々の土地で菅が採れて、その加工した笠が有名であった。三隈菅(11-3837)はその土地名と共に、三隈は水流が岸に向って入り込んだ処を言うので、そこに生える菅はイバラモの様な川藻でなかろうか。スガモPhyllospodix
iwatennis

Makino

という水生藻があるが、これはアマナと同じヒルムシロ科であって、(14-3498)の歌に適合するかもしれない。

菅類は一般に湿地に生育するが、山地に生える、例えばナキリスゲC.
lenta D.Don.
アオスゲC.
breviculmis F.Br.
もあって、”奥山の菅”(03-0259,03-0297,04-0791,11-2761)はこれに該当し、また”高山の菅”(08-1655)にはワタスゲEriophorum
vaginatum
L.
が詩情に合う。冬山には雪が積もり(03-0299,08-1655)、なお緑をたもっているのはカンスゲC.morrowii
Boot.
である。

菅は実をつけないものであるから、(07-1250)に「この実を採りにいく」と書きある件について、これは麦門冬のことであるとの通論である。麦門冬は昔いうヤマスゲ
(大小二種ある、ジャノヒゲOphiopogon
japonisus KerGawler[
ユリ科], ヤブランL.platyphylla
Wang et.Tang[
ユリ科]、共に肥大根を感冒・去痰薬に用う)
この丸い実は紫黒色をしていて美しく、子供等が玩具にしたものである。ところが植物学の大御所牧野富太郎博士はこれはヤマスゲでなくガマズミであると新説を唱えた。その理由は
(07-1344)に『真鳥住む卯名手の神社の菅の根を
衣にかきつけ着せむ子がも』と歌では、ヤマスゲの実は色は黒いが染料にならず、同じ秋頃に稔るガマズミの実は着物を赤色に染める所以と。
<万葉考>『根には衣に摺物ならず、核を誤れる事しるければ』と誤字説を唱えている。しかしこれもおかしな話で、根の煎汁は絹を黄色に染め上げるし、抑々07-1250は染料に用いるとは云っていないのである。

色に論を移すとすれば、筆者はこれをスカミと訓し、スゲの類でなくて山路に稔る小果実の類をいうのではないかと考える。秋が急速に迫りきて、山が紅葉で燃え上がる頃、背丈の低い例えばコケモモVaccinium
vitisidaea
などスノキ属の漿果を、地方によってこれを”スガミ”と呼んで、果実酒やジャムを作るために山へ採りに行くが、摘んだ指先は紫黒色に染まる。之は酸実サンガミから名前がきて菅と関係ないが、スガと発音が似ている。

石穂菅や岩に関連する(04-0791,
11-2472,)
もので、”いわ”を修飾にもつ歌例は他にも多いのであるが、イワスゲC.atenantha
Franch.et Savat
は実在する。キスゲ(ユウスゲ)Hemerocallis
citrine Baroni
もまたスゲの名をきせているが、これもユリ科の仲間である。

このように、スゲを呼称する範囲は極めて広く、カヤツリグサ科の範囲を逸脱して、イネ科・イグサ科・ユリ科・ミクリ科にまでスゲの名が及んでいる。従ってスゲの中心となるべき植物は焦点がぼけて、細長い線型の葉をしているのを総じてスゲというようである。

カヤツリグサの別名を古語でクグと称したらしく、またスゲには菅のほか、莎・椶・莞・薹・奓の漢字が当てられ、それらは夫々特定の菅を指定する。スゲの語源は「すがすがしい」から来ているという。確かに菅の稈茎は綺麗であって、稲藁のように手を汚さない。これで菅畳・菅薦など編み上げるため、昔代は栽培されていたらしい。

文学的には、スゲの根は長く伸びて絡み合っていることから、”結びつく・乱れる”の語に懸かる枕詞に使われ、また”根“に懸かる、「ねもころ」(ねんごろに、心から、徹底的)に結ぶ。

スゲ

<新撰字鏡>

上字須介

スゲ

<和名類聚抄
20>

唐韻云、菅、音姧、字或作蕑、和名須計、草名

<箋注和名類聚抄
10>

説文菅茅也、楚辞招魂註、広雅同、皆以菅茅、為毛詩小雅白華篇、白華菅兮
白茅束兮、伝云、白華野菅也、巳漚為菅、箋云、人刈白華於野
、己漚名之為菅、菅柔忍中
矣、而更取白茅束之、茅比於白華脆、拠毛鄭意
、在野未漚、謂之野菅刈取己漚謂之菅、与茅同類異物、故東門之地陸機疎云、菅似茅而名滑沢無毛、根下五寸、中有里白粉者、柔韌宜索、漚乃尤善矣、中山経郭注云、菅似茅也、本草図経云、菅亦茅類也、然則許慎王逸張揖以茅釈菅、統言之耳、但陶弘景注本草茅根云、
<中略> 秋至而枯、其根至潔白。

<段注説文解字一艸>

菅茅也、从艸官声

<書言字考節用集
六生植
>

菅スゲ
陸機云、似茅而滑無毛者 莎

<日本釈名>

菅スゲ
すがすがしとは清き心也、祓の具に用いて清き物なり、一説直ぐ也、葉もなくてすぐにたつ草なり。

<東雅
15草卉>

スゲ
カヤ
倭名鈔に菅はスゲ、茅はチ、萱はカヤといふと註せり、蘇頌図経、李東璧本草等に拠るに、彼にしては茅といふ菅といふ、異なる物とも見えず、白茅は詩に言う菅茅也とも、菅また茅類也とも、又茅に数種あり、夏花さくを茅とし、秋花咲くを菅とすとも。

ここにして菅読みてスゲといふ者も茅の類也、円経注に茅蒲と見え氏も、詩疏に台草といふ者一種にして、笠を縫うもの、漢もまた然り、一種莎問いふ物,此にしては山菅などいひて、蓑となせしものと見えたり。但し麦門冬読みてヤマスゲといふものとは其名同じけれども、其物は同じからず、万葉集抄にスゲとはスグ也、衆草は枝葉ありて、をさなきより生茂るもあるに、菅はすぐにたてる物なりとうふなり、ただ其細く立てるをいふ事、芒をススキといふが如くなりと聞こゆる。 

<倭訓栞
12>

すげ:
菅をよむはすがと通ず、すがすがしき意、歌に白菅、岩小管などよめり、祓屮にも用るものはみそぎのそぎとすげと同じ語なるをもて也、穢をはらい放ソケるの名とす。住吉にて六月祓を菅の祓と称すおいへり、新撰字鏡に多*も訓ぜり、黄すげは仙茅也、日光黄菅あり、ハマスゲは莎草也、姫菅は池楊梅也、又一本菅あり。

すげがさ:
菅蓋也、古歌に三島すげ笠、又王のみかさにぬへる有馬菅とも見えたり、延喜斉宮寮式に神輿の蓋のことに、摂津国笠縫氏より参り来て作るとみえたり、祭儀に用いるは神よりの風なり、今も伊勢斎宮の遺跡のあたりには、菅の小笠を売る者多し、三才図会に台笠台夫須也、即莎草なりと見えたり、長暦官符に菅笠柄長八尺五寸と見ゆ、今だいがさとするも、台笠の義などにや、

<大和本草
8
水草>


本邦昔より菅の字をスゲと読めり、スゲは水草葉にかどありて、香附子の葉の如にして長し、笠にぬう、近江伊勢多く水田に植えて利とす、他州にも多く植える、詩の陳風に曰、東門之池可以漚-レ菅、朱子伝曰、菅葉似茅而滑澤、茎有白粉柔靭索也、今按スゲノ類多し、水沢に生ず。

<農業全書
6^3
>


栽培法、土用の中刈り取る。<省略>すげの栽培は稲の作業の閑期に行ないえて、利あるものなれば、農家にこの栽培を薦める旨書いてある。

莎草
カヤツリグサ・クグ

<倭名類聚抄
20>

莎草
唐韻云、莎草名莎草 蘇禾反 楊氏漢語抄云具々、草名也

<箋注倭名類聚抄
10>

広韻云、莎草名、此衍一草字、按本草和名引本草稽疑云、莎草一名三稜草、故輔仁於三稜草条莎草、並訓美久利也、然証類本草莎草根条引唐本注云、茎葉都似三稜、又京三稜条引図経曰、五六月開花似莎草、並以莎草三稜別草、故漢語抄則訓莎草久具、源君従之分三稜草莎草二物也、蘇敬註地本草莎草云、此草根名香附子、一名雀頭香、茎葉都似三稜、根如附子、周匝多毛、交州者最勝、大者如棗、近道者如杏仁許、図経云、今近道生者、苗葉如薤而痩、根如視筋頭大、衍義、莎草、其根上如視棗核者、又謂之香附子、今人多用、雖於莎草根、然根上或有或無、是今俗呼波万須介、或呼加夜都利具佐、漢語抄訓久具

<書言字考節用集
六生植
>

莎草マスグ・マルスゲ、香附子コウブシ
莎草
,続根草、地毛、地藾、水巴激、雷公頭並同

<東雅
15草卉>

莎草クグ
中略
蘇頌図経にこの草用茎作履鞋、と見え、李東璧本草にも、可笠及雨日衣、又作蓑など見えたり、即今俗にもクグと云ひて、或いは蓑となし、或は縄となすもの是也、クグの義不詳
クグとは茎なり、和名抄茎立の字を読みてクグタチといふ。

<大和本草
8水草>

クグ
海浜斥地に生ず、水陸ともに宜し、葉は香附子の葉に似て、背に角一条有り、織りて短席とす、農人これを以って馬具とし、又縄とす、武人是を用いて陣中に飯を包む苞とす、槌にて打つべし。

<和漢三才図会
>

菅、蓋し、荊三稜ケイサンリョウ属にして、相異なり、香附と蚊帳釣草の異なるがごとし、按ずるには、菅の葉は茅に似、滑択にして茎に白粉あり、今いふ菅は葉に剣背シノギありて硬く靭シナヘず、茎の本白し、別に一茎を抽んで穂を出す。六月、葉を刈りて乾せば白色、笠に縫干て美なり

莞・大莞・香蒲

<重修本草綱目啓蒙
16
水草>

香蒲
莞 ツクモ タクマモ オホイ マルスゲ ニョイ オイ
フトイ ブッツジャヤウ トウイ リウセイ サシモギサ
リュウキウ シチトウ オエ 一名水葱、翠菅、葱蒲、

<倭名類聚抄
20>


唐韻云、莞 音完、一音元、漢語抄云、於保井
以為―レ席者也、

香附子
莎草 コウブシ ハマスゲ
ヤガラ ミクリ

<重修本草綱目啓蒙
9芳草>

莎草マスグ・マルスゲ、香附子コウブシ
一名回頭青清異録 水三稜品字箋 雀脳香本草原始

莎草は苗の名にして、香附子は根の名なり、而してその苗を用いるには、カヤツリグサを用いるを良とす、蜀漆、常山、沢漆、大戟の例の如し、故に根なきものを莎草とし、カヤツリグサと訓じ、根あるものを香附子とし、ハマスゲと訓ずべし、宗奭の説にも根上或有井或無と云う、

カヤツリグサは品類多し、共に香附子に似て春生じ、冬枯れ、根に塊なし、その花は香附子より粗なり、香附子は田野道端甚だ多し、海辺殊に甚だし、故にハマスゲと呼ぶ、葉は薹の葉に似て小く濶さ一分許、長さ六七寸、肥地のものは12尺、三背にして光あり深緑色、一根に叢生す、夏月茎を抽ること一尺許、その頂に数叉を分ち、上に砕花簇生す。以下省略

<書言考節用集
6
生植>

香附子コウブシ
莎草、続根草、地毛、地頼、水巴戟、雷公頭並同、カヤツリグサ、マルスゲ、水香稜

<東雅
15
草卉>

莎草クグ
蘇頌図経に、此草用レ茎ニ鞋履―、と見え、李東璧本草にも可レ為ニ笠及雨衣、又作為ニ蓑―など見えたり、即今俗にもクグと云て、或は蓑となし或いは縄となすもの是なり、クグの義不詳、茎の義ならんか、倭名抄に茎立つを読みてクグタチといふこれなり、

<和漢三才図会
93芳草>

香附子
按香附子所々多有之、而西国之産細小不佳、摂州住吉之産為上、近時京師坂陽以鉄杵碓
搗砕出之、呼曰砂利香附子、以製方簡便人喜求之、然所鉄再宜製、其葉不七八寸、非雨衣、与水莎草混注者矣

<本草和名
9>

莎草一名縞楊玄操音古語反
一名侫莎、実名緹楊玄操音他礼反,一名滈篌楊玄操音和反、根名香附子一名雀頭香、一名莎草、己上三名出蘇敬註
一名三稜草出稽疑
一名烏堙出薬訣 一名地髪出雑要訣
一名鎬雙、一名青莎草己上出釈薬
和名美久利、一名佐久

20
外薬>

三稜草本草所謂莎草是也
和名美久利

<大和本草
6>

香附子
上代は薬に不用、陶弘景曰、方薬不復用、中略 後世には用之て要薬とす。今按凡香気あるものは火を忌、香附子は生にて用、炒ても用いる、血を止める薬のほか、常に炒過すべからず、病に随て生と炒と黒炒と三種用ゆべし。一様に炒過ぎて用いるべからず。

黄菅・紅菅キスゲ

<本草和名
7花草>

黄莎
葉はスゲに似たり、花黄にして萱草に少似て単葉なり、又ベニスゲあり、花細長く色紅なり七月に開く

<和漢三才図会
94末湿草>

粉条児菜キスゲ
菅草 紅菅草
農政全書云、粉条児菜生田野中
、其葉初生就地叢生、長則四散分垂、葉似萱草葉而痩細微短、葉間攛葶間開淡黄花、葉甜煠熟油塩調食、按黄菅高二三尺、葉似萱草細硬、又比菅則少濶、六月開花、黄色単葉、似姫萱草花、所謂粉条児菜是也、紅菅草
葉与黄菅草同、抽茎開花,濃紅色似萱草花

<剪花翁伝
3>

黄菅
萱草の少なきものに似たり、開花四月中旬、方日向、地ニ分湿、土選ばず、肥満小便、芽出し前に注ぐべし、分株九月末也

香茅
タマフ・ミノクサ

<和漢三才図会
92
92山草>

香茅
菁茅 璚茅 云太末保、又云蓑草
按香茅葉似菅茅チガヤ―而有三稜
、微柔軟、農家用之作雨衣、蓑其穂黄赤色、其他茅穂白、播州磨多有之、

崖椶イトスゲ

<和漢三才図会
98石草>

崖椶
俗云加牟曾久、崖椶之字音之訛乎

本綱、崖椶施州石崖上有之、苗高一尺以来、状如椶、四季有葉無花、土人采根去粗皮、入
<中略> 崖椶
深谷石間、其根株大有赤黒毛椶櫚
、茎硬長亦如椶、其葉似番蕉ソテツ而片片微團如破菅、四時不凋無花実、移裁人家活、其枯葉経年不落、立花者用挿水即潤亦奇也、総形状近于番蕉于椶櫚也、蘇頌之時代中国番蕉不有、故唯謂椶乎

<重修本草綱目啓蒙
16石草>

崖椶
イトスゲ

山岸に多く生ず、亦平地にも陰処に多し、葉極めて細く、龍常草タツノヒゲ葉の如く深緑色、長さ一尺余、一根に叢垂す。夏月茎を抽て花を開く。山莎ミノスゲに似て小くして黒色、後実を結ぶ。崖椶二両説あり、此書の図によれば、イトスゲなり、証類本草の図によればササスゲない、ササスゲは一名タガネソウ尾州、ヤマヲバコ播州、ギョウジャソウ薩州、山中陰処に甚だ多し、一根数葉、長さ三四寸、広さ一寸許、三背ありて、薹スゲの如し、亦萱草の葉に似て短く淡緑色、高山には深紫班点なる者あり、皆夏中花を開く。形色ヒメスゲに異ならず、秋後苗枯れ根は枯れず、形麦門冬ヤブランの如くにして、粗く堅く連珠をなす、うちに硬心あり、ここに根去粗皮と云はササス也。

植物

カヤツリグサ科は全世界に約703700種ある。草本で、茎は3稜形が普通とし、葉は線形で、基部は筒状の葉鞘となっている。花は概して小型、両性また単性で小穂の苞の腋に単生する。花被は無いかあっても針状になっている。雄蕊は普通3個あって、葯は糸状になって底着し、2室。子房は1室。柱頭は普通2~3個。胚珠は1個。果実は小型の痩果で裂開せず、胚乳は粉質or肉質。分類については、種々ある。

カヤツリグサ科
Cyperaceae

スゲ亜科
Carieoideae

スゲ連
Cariceae

スゲ
Carex

15002000

エリナ
Elyna

6
ユーラシア大陸

ヒゲハリスケKobresia

ca
6
 北半球

ウンキュア
 
Uncinia

ca.
35
熱帯

ラゲノカルプス連
Lagenocarpeae

コレオクロア
Coleochoa

5
アフリカ、マダガスカル

ラゲノカルプス
Lagenocarpus

ca.70
種熱帯と南アメリカ

トリレプス
Tripis

6
アフリカと南アメリカ

シンジュガヤ連
Sclrieae

シンジュガヤ属
Scleria

ca.
200
熱帯から温帯にかけて

カヤツリグサ亜科
Cyperoideae

カヤツリグサ連
Cyperus

クリシトリクス
Chrysithrix

6
南アフリカと西オーストラリア

カヤツリグサ属
Cyperus

ca.
600
熱帯から暖帯にかけて

ドウリキウム連
Dulichium

ドウリキウム
Dulichium

1
アメリカに1種のみ

ヒポリツルム連
Hypolytreae

ヒポリトルム
Hypolytrum

ca.80
熱帯・亜熱帯

マパニア
Mapania

ca.80
熱帯

イヌノハナヒゲ連
Rhynchospora

ガーニア
Gahnia

ca.
35
アジアとオーストァリア

イヌノハナヒゲ
Rhynchospora

ca.
200
世界中に

ノグサ属
Schoenus

ca.
100

ホタルイ連
Scirpea

ハリイ属
Ereocharis

ca.
200

ワタスゲ属
Eriophorum

ca.
20
北半球の湿地

テンツキ増
Fimbristylis

ca.
300
熱帯、亜熱帯

リポカルファ
Lipocarpha

ca.
11
熱帯

ホタルイ属
Scirpus

ca.
300

カヤツリグサ科の内で“すげ”の名前のついたものは次ぎのようである。

スゲ属
Carex

カサスゲ類

ex.
ナルコスゲ
シオクグ カサスゲ ヤチスゲ オニスゲ
ヒメスゲ ヒゴクサ シラスゲ ヤワラスゲ

アオスゲ類

ex.
イワスゲ
ヒカゲスゲ コジュズスゲ ヤワラスゲ
カンスゲ アオスゲ ヒゲスゲ

コハリスゲ類

ex.
シラコスゲ
キンスゲ コハリスゲ マツバスゲ ハリガネスゲ

アゼスゲ類

ex.
タヌキラン
タニガワスゲ サドスゲ アズマナルコ
カワラスゲ アゼスゲ ゴウソ テキリスゲ

クロカワズスゲ類

ex.
ミコシガヤ
ヤグスゲ マスクサ ヤチカワスゲ コウボウムギ
アブラシバ

ホタルイ属
Scripus

ex.
ミネハリイ
ビヤッコイ アブラガヤ ウキヤガラ ホタルイ
フトイ カンガレイ サンカクイ

カヤツリグサ属
Cyperus

ex.
クグ
ハマスゲ シチトウ カンエンガヤツリ コゴメカヤツリ
カヤツツリグサ タマガヤツリ シロガヤツリ

カヤツリグサ Cyperus
microiria Steud.
別名 マスクサ

本州・四国・九州・朝鮮・中華国の畑地や道端に生える一年生。湿潤の土壌を好む。茎の高さは3060cm,断面は三角形、内部は軽泡状の髄質で中実、葉は長さ2050cmの腺形、表面は深緑色で光沢がある。花は茎の頂点に散形に花序柄を放射状に数本出すが、花序の元から50cmもある苞葉を長く付け、一見全体が長い草のように見える。花穂は大小混ぜて十数本出すが、3基数に従っている。花穂長さ~15cm,頂部は3本に分かれ、各々中穂となり、中穂には長さ712mm1.5mm位の小穂が数十個付ける。小穂は黄緑色→黄褐色に変化する1,5mm位の鱗片であり、これが810月頃稔って果序となる。和名は蚊帳吊であるが、3角の茎を相対の反対から裂くと4角形になり、これが蚊帳を吊ったように見えるからである。枡草というのも同じ、本草を刈って敷物を作る地方もある、

カエンカヤツリ Cyperus
exaltatus Retz var. iwasakii T.Koyama

本州・九州・朝鮮・の湿地帯に生えてたまたま大群落を作る。茎は太く、高さ80120cmに達する。葉の巾815mm.花序は1030cmの大形で茎頂に豪快につける。朝鮮で莞草ワングルと呼んで栽培されているのは本種で、茎を編んで敷物をつくる。

カミガヤツリ
C.
papyrus
L
.
パピルス

南欧州~アフリカに分布する。大形の多年草。高さ1.52mに達する大型で、葉は葉鞘にのみ退化し、茎は3稜があり、頂に大型の花序を付ける。古代エジプトで茎を裂き、紙を作っていたとして、有名である。最近日本にも鑑賞用として見る事のあるのはシュロカヤツリ
C. alternifolius
L.
で、茎の頂に十数葉の苞葉を輪状につける。其の型殻Umbrella-plantの英名がついている。

シチトウ Cyperus
monophyllus Vahl.
リュウキュウイ

本州の暖地~琉球にて栽培され、台湾以南では野生する。琉球畳の表は本種で織られる。七島シチトウはトカラ列島のことである。

ハマスゲ cyperus
rotundus L

世界の熱帯~亜熱帯に広く分布し、日本では本州~琉球の海岸砂地に生える。草丈2040cmでやや細型、基部は褐色の繊維に覆われ、細長い匐枝伸ばして繁殖する多年草。葉は巾26mm、花序は巾10cm一回分岐。小穂は腺形で長さ1.53cm1.52mmで中軸に斜開し、光沢があってややまばらに2040ケ花をつける。果は長楕円形で偏三角形、7~10月に熟す。根茎の肥大部を香附子コウブシと称して漢方で通径・鎮痙の目的で処方される。精油約1%含み、シペレン・シペロール・ピネンを主成分とする。

ワタスゲ Eriophorum
vaginatum L.
スズメノケヤリ

東アジア・シベリア・ヨーロッパ・北アメリカの暖帯~亜寒帯に広く分布する。日本では中部以北の亜高山の湿原に群生する多年草。匐枝は無く、茎の高さ2050cm,細いが硬くて直立する。巾11.5mm.扁三角形。葉は12個あるが鞘状に退化し、上半は黒色で膜質。小穂は1個が頂生し、長さ12cmの狭卵形、鱗片が多数着いて灰黒色、先が尖り1脈がある。花被片は糸状で花後、菓について伸び長さ2
2.5mmになり、球状の白い塊を作る。よく似たものにサギスゲ
E.gracile
Koch
がある。この綿塊は柄がついて長楕円形であることにより見分けられる。また根茎は長い匐枝がついている。

カサスゲ Carex
dispalata Boot

南千島・樺太・朝鮮・中国・ウスリーなど北方系のスゲであるが、本邦での北海道~九州の、湿地また浅水に生える多年草。長い地下匐枝が出る。茎は高さ50100cm、基部の鞘は上部が糸網状になり、暗赤紫色の部分がある。葉は巾48mm、頂小穂は雄性で、腺形、暗紫色を帯びる。側小穂は3~6個、円柱形で長さ310cm. 果胞は斜開し、長さ34mm,上方に多少外側に曲がって嘴状になり、乾くと汚暗褐色になり柱頭は脱落する。47月に熟す。本種は菅笠や蓑を作る為に栽培された。

キンキカサスゲ C.d,Boott
var, takeuchii Onwii ; C. persistens Ohii

アキカサスゲ C.nemostachys
Stend.

カンスゲ Carex
morrowii Boot.

本州の福島県以西の太平洋側・四国・九州に生える。反対にホソバカンスゲvar.
temmolepis Ohowi
は日本海側に主に生える。山地の林内に見られる多年草、根茎は短く茎の高さ3040cm。葉は多数根生し、濃緑色で、巾510mm腺状で硬質、光沢がある。頂に出る小穂は雄性で長さ24mmの細長、脇に出る小穂は雌性で3~5個長さ34.5mmの短円柱形、淡黄緑色で、口部は硬い。4~5月に熟す。冬でも緑色を保っているので寒菅の名前がある。各地方に特定種がある。

オクノカンスゲ C.
foliosissima Fr,Schm.

ハチジョウカンスゲ C.
hachijoensis Akiyama

ダイセンカンスゲ C.
daisenensis Nakai

タシロスゲ C,
sociata Boott.

ツシマスゲ C.
tsusimaensis Ohwi

また近似したものにヒメカンスゲ
C.
conica Boott.,
コカンスゲC.reinii
French et Sav,
など。

ゴウソ C.
maximowiczii Miq.

南千島・北海道から琉球、朝鮮・中国に分布する。平地の湿った土地を好む多年草、茎は高さ4070cm、基部の鞘は葉身がなく、肉桂色でぢやわらかく、糸網は殆どない。葉は巾46mm。頂小穂は雄性で線型、赤褐色。腋小穂は雌性で円柱型、赤錆色先は突出する。果胞は広卵型で著しく膨らみ、長さ4mm位、小突起が密生して灰緑褐色。5~6月熟す。和名は郷麻で、昔代この草葉を叩いて繊維をとり、粗布を織った。

カヤツリグサ科Cyperaceaeは単子葉植物のなかで、イネ科とラン科に次いで種は多く約454000種ある。

日本の環境にあっているためか、338(内スゲ属210)が知られている。人間生活と関係の深いものを挙げると、蓑笠の雨具の材料とするカサスゲ、縄に編むヒゲスゲ、布を織るゴウソ、琉球表を編むシチトウイ・フトイ、外国では砂糖袋を作るアンペラ、古代エヂプトのパピルス、南米チチカカ湖のトカラ、漢方薬の香附子となるハマスゲ、が挙げられる。

この科は風媒花であるから目立たないが、その着き方と両性花or単性花の構想が分類の主要な目安になる。茎は三稜角で中に髄が詰まっているのが普通であるが、アブラガヤ・ヒトモトススキのような例外もある。葉はときに退化して鞘になる例があるが、完全に閉じて筒になることはイネ科との相違である。細胞遺伝学で染色体数は、倍数になる筈であるに拘わらず、カヤツリグサ科では、n<n+><n+>となる事に非常に興味がある。このため雑種を作りやすく、検索が多岐で難しくなっている。

3角の茎を両側から、裂くと4角の辺を作る現象も興味あるので、これがシソ科のように4基数性になり、更にバラ科のような5基数性の植物へ進化した幾何学解因があるようである。

古文

<古事記歌謡>

八田の一本須宜
いふ待たず 立ち荒れなむあたり菅原

<枕草子
66>

山菅
日かげ 山藍 浜ゆう いとおかし

<夫木和歌抄
28
10>

山城のいづみの小管
おしなみに 妹が心を 吾が思はなはに

柿本人麻呂

ゆふは河
夏ゆく水の 岩小菅 ぬきも定めぬ 玉ぞみだるる

藤原家隆

あさは野に
たつは小管 しきたへの 枕にしても 一夜あかしつ

藤原為家

<散木房歌集
恋上
(1128)>

いとどしく
物思いをれば 山かつのすげかるさは たづさわぐなり

<中右記(1108)>

菅笠
天仁元年四月七日 出車打出同前、車無、網代・八葉、月令過差、用菅笠

<今昔物語
29-36>

練色の衣の錦はるかなる三つ許りを着て、菅笠を着て

<山家集
12c>

旅人の分くる夏の野の草茂み
葉末にすげの小笠はづれて

<拾遺雑歌(1172)詞書>

ちひさき飾り粽を
やますげの庫に入れて

<作庭記(1040年頃)>

石所々立て、其のわきわきに
こざさ、山すげやうの草うゑて

<経信集(1097年頃)>

三室山もみぢちるらし旅人のすげのかさに錦織りかく

<新古今和歌集(1214)>

東路に刈るてふ萱のみだれつつ束の間もなく恋ひや渡らむ

<太平記2
(14c
)

長崎新左衛門尉意見事「はきも習はぬ草鞋に菅の小笠を傾けて

<異名分類抄
2>

すげの庭鳥(キリギリスのこと)

<浮世草子・薄紅葉(1722)>

人目しのぶのすげのおがさに、かいどりの御姿を、見そめまいらせより

<禁中方名目抄校註(174160)>

下・院中『菅円座スゲエンザ
白菅にて拵えたる円座也、讃岐国よりでたる故、讃岐円座とも

<糸切初心集(1664)>

菅笠節(江戸時代に流行した小唄>

破れ菅笠や
やんやあ 締め緒が切れての おおえい 皿にきもせず、えいさんさ
さややあさんさ 捨てもせず

<俳諧>

菜の花を
出るや塗り笠 菅の笠

團水

胸あわぬ
越の縮を おりかねて

芭蕉

おもいあらはに
菅の 苅ちさし

枳風

すげ笠に
筑摩祭りは なりにけり

菊阿

秋雨や
わが菅蓑は まだ濡らさじ

蕪村

菅笠の
なかを覗きたや 風の盆

水木真寛

名前

〔語源〕

古語で、紐など手で編むことを”すげる”ということより、②あたらしいことを“清しすがすがしい”と言い、祓いの具に用いることから<祝詞考・日本釈名・大言海> ③真っ直ぐに立つ草であること<日本釈名>
葉が反り返っているいることからソルスセの反
<名語記

<大言海>
スガはスゲの交替形。蔡祀秭萱の用に供す。菅の字はかやんあるを誤用巣。茅に似て滑らかにして毛なく葉のひろきものを笠とし、狭きを蓑とす。因りて蓑菅、笠菅の称あり。>

〔古語〕

須毛、須気、須計、須宜、按子、安之、阿之、蕉萩むしろい、牟志呂井

〔英語〕

Sedge

用途

〔用材〕

稈茎・葉を乾燥し、笠・蓑・などを編む。円座・菅畳・枕・草履、繊維はつよく、下駄の鼻緒またゴウソは織布の原糸になる。スゲは色淡く清潔感があるので、祭祀の用具に用いる。

スゲ稈は7~8月の晴天日に刈り、2~3日強い日光の下に乾燥する。もしこのとき湯立ちがきて雨に当たると黒変して不商品になるという。

〔香水〕

すげ類の内、香りのよいハマスゲから香料をとる、

{薬事}

香附子 ハマスゲの根茎


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