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すげかさ
菅笠・石本菅
カサスゲ・カンスゲ
[万葉集記事]
11-2819 |
16-3875 |
03-0397 |
12-3087真菅 |
(一) |
問答 臨照 おし照る |
注釈:
この歌は「2818
杜若
咲く沼の菅を笠に縫ひ 着む日を待つに年そ経にける、」に対する反歌である。
押し照る=難波にかかる枕詞。
難波菅笠=難波で作った笠。難波は笠の産地として有名であった。
笠ならなくに=笠でないのだから、
(二) |
無名歌 琴酒乎…道尓相佐婆 ことさけを |
注釈:
ことさけを=まくらことば
色着せる=色を着けた、即、女性が被る笠。
菅笠子笠=小さい菅笠
わが頸げる=私が首に掛けている。
珠の七条=貫いた珠の緒の数本と『七条』は必ずしも七本でない。
[概説]
雨の多いアジアの東南地方で、農夫達が雨と日差よけの兼用として菅笠を被り、作業をしている田園風景がよく見られる。それに、この地方を旅行するとよく遭遇するのは、スコールと云う奴である。よく晴れた日でも午後になると雷と一緒に急に襲い来る。スコールの去った後は涼しくて反って気持ちがよいから、苦にしない。
地球温暖化の影響か2008年の夏に日本でも経験したが、豪雨は雷を伴うので金属骨の入った折畳み笠は落雷を誘発する危険があるので差さないほうがよろしい。そこで、スコールの来そうな季節には、現住民が観光客のために、菅笠を売りにくる。物凄いドシャ降りであるからそんな笠を被っても、いづれズブ濡れになるのであるが、換算して数拾円の価格であるから結局買わせられてしまう。日本では雨上がりの後、必ず骨が壊れたビニール傘が打ち捨ててあるのをみるが、これは見苦しいし、資源浪費の観点から勿体無い。日本も早晩そのような気候になるかも知れないから、これが菅傘に変わる日が到来するかもしれない。
水田を営む国で農民が着用する雨具の蓑笠は、脱穀した稲藁を利用するのであるが、笠はスゲを用いる。それはスゲが軽いため頭に負荷が懸からないからである。菅は軽く柔らかく、それに繊維が強く、そして綺麗である。余談であるが、藁人形のような簡単なものでもスゲ製のほうが価値が上で、神が降臨しやすく、効果があるそうである。
『カサスゲの葉で笠、カンスゲで蓑を作り、シオクク・ショウジョウで縄を綯い、ゴウソで布を織る。イナワラは下須ゲスで草鞋を作る』と里詞にあるごとく、菅笠の原植物はカサスゲ・カンスゲである。カンスゲよりカサスゲの方が葉巾広く長いので使勝手がよく、栽培もされていた記録もある。<カンスゲCarex
morrowii Boottは葉背低く実際的でないと思われる)
<播磨風土記 |
敷草村 |
<延喜式 |
御輿一具、蓋料一囲、野宮装束 御輿中子菅笠一具 |
<古事記歌謡> |
八田の一本須宜はしく子持たず |
植物
カサスゲ Carex
dispalata Boott ミノスゲ
南千島・樺太、北海道・本州・九州、朝鮮・中国に分布。平地の湿泥地に生える多年草で、長い地下匍匐茎で繁殖する。草丈50~100cmの中型菅で茎基部の鞘は暗赤色で糸網を着く。葉は巾4~8mm。花穂は頂穂が雄性で腺形、帯汚暗紫色。雌性の側小穂は円柱形で長さ3~10cm、3~6個着く。果胞は斜開し、長3~4mm,乾くと汚暗褐色になり柱頭は脱落する。菅笠や蓑を作る。
カンスゲ Carex
morrowii Boott
福島以西の本州・四国・九州に見る常緑多年草。草丈20~40cm,葉は多数叢生し、濃緑色で硬い。頂小穂は雄性、側小穂は雌性。果胞は長さ3~3.5mm,淡緑色で開出する。4~5月に熟す。